“易(い)” の例文
もっとも発狂のためと解釈するのは馬の脚のためと解釈するのよりも容易だったのに違いない。難を去って易(い)につくのは常に天下の公道である。
馬の脚 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
この類の夢想を計れば枚挙(まいきょ)に遑(いとま)あらず。みな事の難易と時の長短とを比較せずして、時を計ること寛に過ぎ、事を視ること易(い)に過ぎたる罪なり。
学問のすすめ (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
ぱっと移りの易(い)い杉葉に火が付いて、紅い炎は梁の煤にまで届こうとして、同時に太吉の顔を赤く色彩(いろど)った。太吉は髪の縮れた、眼の大きな児(こ)であった。
越後の冬 (新字新仮名) / 小川未明(著)
わが浄土門他力の御法(みのり)はいかにといえば、かの竜樹菩薩(りゅうじゅぼさつ)も仰せられたごとく——仏法に無量の門あり、世間の道に難(なん)あり易(い)あり、陸路のあゆみは則(すなわ)ち苦しく
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
大乗の欣求(ごんぐ)もあり得ないわけでございます、大乗は易(い)にして、小乗は難(なん)なりと偏執(へんしゅう)してはなりませぬ、難がなければ易はありませぬ、易に堕(だ)しては難が釈(と)けませぬ
大菩薩峠:32 弁信の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
その中、善いの丈けを受けて、これに則(のっと)っていれば、聖賢になれるのだが、お互の受けて則る暗示は可もなく不可もないものが多いのである。何うしても難よりも易(い)に就く。
善根鈍根 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
汝等、天下百姓より進んで、石城を毀つて、新京の時世装に叶うた家作りに改めよと仰せられた。藤氏四流の如き、今に旧態を易(い)へざるは、最其位に在るを顧ざるものだとお咎めがあつた。
死者の書:――初稿版―― (新字旧仮名) / 折口信夫(著)