日焦ひや)” の例文
田舍の内儀——それも中年過ぎの日焦ひやけのした、大年増を豫想した平次も八五郎も、ハツと息を呑んだのも無理のないことでした。
小初は、み台のやぐらの上板に立ち上った。うでを額にかざして、空の雲気を見廻みまわした。軽く矩形くけいもたげた右の上側はココア色に日焦ひやけしている。
渾沌未分 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
ひどく日焦ひやけしたその顔は、半分以上、頬髯ほおひげ口髭くちひげに隠れている。大きなかしの棍棒をたずさえていたが、そのほかには何も武器は持っていないらしい。
久濶きゆうかつのみやげに同志をひきあわせよう」仙介は日焦ひやけのした顔をふり向け、太宰が坐るのを待ちかねたように云った、「こちらは讃岐さぬきの井上文郁、それに長谷川秀之進だ」
日本婦道記:尾花川 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
天気さえ好ければ毎日半ズボンを穿いてライカを提げながらそこらじゅうをて廻っているらしく、日焦ひやけした顔に汗をにじませて不意にけ込んで来るやいなや、先ず勝手口へ廻って行って
細雪:02 中巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
日焦ひやけした彫像ちょうぞうのように立派な体躯を持った若者だった。そのズドが
宇宙尖兵 (新字新仮名) / 海野十三(著)
長押なげしまげ刷毛はけ先が届きそうな堂々たる体躯で、浅黒い顔は日焦ひやけのせいでしょう、にっこりすると淋しさのうちにも、ふるいつき度いような愛嬌があります。
裸身の女仙 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)