日暮ひぐら)” の例文
その時夕暮の窓際まどぎわに近く日暮ひぐらしが来て朗らに鋭どい声を立てたので、卓を囲んだ四人よつたりはしばらくそれに耳をかたむけた。あの鳴声にも以太利イタリヤの連想があるでしょうと余は先生に尋ねた。
ケーベル先生 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
おさゆるなみだそできてモシとめれば振拂ふりはら羽織はおりのすそエヽなにさるゝ邪魔じやまくさしわれはおまへさまの手遊てあそびならずおとぎになるはうれしからず其方そなた大家たいけ娘御むすめごひまもあるべしその日暮ひぐらしの時間じかんもを
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
彼はたちまち眼中に涙を浮べて、財産家に生るるが幸福なりとか、御身おんみの言葉たがえり、仮令たとえばその日暮ひぐらしのいと便びんなきものなりとも、一家団欒だんらんの楽しみあらば、人の世に取りて如何いかばかりか幸福ならん。
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
日暮ひぐらしの声と共に夕暮が来ます。
監獄署の裏 (新字新仮名) / 永井荷風(著)