斎藤さいとう)” の例文
旧字:齋藤
……最初あれに気づいたのは、ある晩、ベッドの中で、斎藤さいとうと抱きあって、頬と頬をくっつけて、そして、斎藤がいつものように泣いていた時よ。
断崖 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
お前も知ってるだろう、早船の斎藤さいとうよ、あの人にはお前も一度ぐらい逢った事があろう、お互いに何もかも知れきってる間だから、まことなしだ。
春の潮 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
も少しったら、演劇の勉強も本格的にはじめるつもりだ。兄さんは、まず、演劇のいい先生に紹介してあげると言っている。斎藤さいとう氏の事かも知れない。
正義と微笑 (新字新仮名) / 太宰治(著)
ある日、わたしは斎藤さいとうさんとむかいあってすわっていました。斎藤さんは号を緑雨りょくうといい、別に正直正太夫しょうじきしょうだゆうともいって、筆とり物を書く上ではわたしたちの先輩にあたりました。
力餅 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
たとへば斎藤さいとう氏や北原きたはら氏の歌は前人の少しも盛らなかつた感情を盛つてゐる筈である。
又一説? (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
やがて現はれたるものを見れば文学雑誌はその名を『文芸界』と称し佐々醒雪さっさせいせつを主筆に平尾ひらお不孤ふこ草村くさむら北星ほくせい斎藤さいとう弔花ちょうかの諸子を編輯員とし巻首にはたしか広津柳浪ひろつりゅうろう泉鏡花いずみきょうからの新作を掲げたり。
書かでもの記 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
どこへ行くねってまたきいたらば、更木さらき斎藤さいとうへ行くよと言った。岸についたら子供はもういず、おらは小屋こやの入口にこしかけていた。ゆめだかなんだかわからない。けれどもきっと本当だ。
ざしき童子のはなし (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
どうです斎藤さいとう
或る女:1(前編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
「そうですよ。制服が二人に私服が二人だった。中に警部補がいてね、斎藤さいとうという名刺をくれましたよ」
妖虫 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
同じクラスのお友だちは、みなひじょうにおどろいて、泰二君の身のうえを心配しましたが、中にも胸をさわがせたのは、大野おおの君、斎藤さいとう君、上村かみむら君という三人の少年探偵団員でした。
妖怪博士 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
畑柳家には、執事しつじの様な役目を勤めている、斎藤さいとうという老人がいたのだけれど、あいにく不在の為に、三谷が代って、警察へ電話を掛け、事情を告げて、茂少年の捜索を依頼した。
吸血鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
「早くから起して済みません。明智さんいらっしゃるでしょう。大至急御知らせしたいことがあるのです。まだ御寝おやすみでしょうけれど、一寸起してくれませんか。僕? 斎藤さいとうですよ」
一寸法師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
無意味な世間話が何時いつの間にか懐旧談に入って行った。客の斎藤さいとう氏は青島役の実戦談を語り始めていた。部屋のあるじの井原いはら氏は火鉢に軽く手をかざしながら、黙ってその血腥ちなまぐさい話に聞入っていた。
二癈人 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)