文目あやめ)” の例文
そして、遂には文目あやめも分かぬしんの闇にとじこめられてしまった。……彼女は極度の恐怖に気を失ってしまったのだ。
妖虫 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
じっと穴の中を見込んだが、文目あやめも知れぬ闇の底から冷たい風が吹いて来るばかり、老人の姿は見えなかった。
日食のうち、夜のうち、文目あやめもわかたぬ暗がりのうちには、最も強い人々にとってさえ不安がある。夜ただ一人森の中を歩いて戦慄せんりつしない者はない。影と木立ち、二つの恐ろしい密層。
焔はけふり揉立もみたてられ、けむりは更に風の為に砕かれつつも、蒸出す勢のおびただしければ、猶ほ所狭ところせみなぎりて、文目あやめも分かず攪乱かきみだれたる中より爆然と鳴りて、天も焦げよと納屋は一面の猛火と変じてけり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
まるで酒窖さかぐらの中のやうに真暗で、物の文目あやめも分らなかつた。
文目あやめもおぼろ、しめやかに、あゝしめやかに、つくねんと
海潮音 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
文目あやめもわかぬよるむろに濃き愁ひもて
有明集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
いつの間にか夕闇ゆうやみがあたりをこめ、たださえ暗い密室は文目あやめもわかぬ闇となっていた。その暗黒に包まれたまま、彼の泣き声はいつまでもつづいていた。
人間豹 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
一巻のブックをふところにして、嘉平治平かへいじひらはかま焼海苔やきのりつづれる如きを穿うがち、フラネルの浴衣ゆかたの洗ひざらして垢染あかぞめにしたるに、文目あやめも分かぬ木綿縞もめんじま布子ぬのこかさねて、ジォンソン帽の瓦色かはらいろに化けたるを頂き
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
文目あやめもおぼろ、蕭やかに、ああ、蕭やかに、つくねんと
海潮音 (新字旧仮名) / 上田敏(著)
文目あやめも知れぬ闇であった。人影などは見えなかった。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
思ひなきこそ文目あやめなき
有明集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
同時に骸骨の着物に燃え移っていた焔も消えて、地下室は再び文目あやめもわかぬ暗闇になった。
魔術師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
だが、襖の奥は文目あやめかぬ暗闇だ。仮令そこに照子がいたとしても、見える訳がない。
恐怖王 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
それよりも、彼を取り囲む文目あやめかぬ暗闇が、云うばかりなく心細かった。
妖虫 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
文目あやめもわかぬ闇の中に、彼の煙草の火が、ポッツリと赤い点を打っていた。
孤島の鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
だが、そこには別に恐ろしいものがいる訳ではなく、ただ文目あやめもわかぬ闇があるばかりであった。天井も左右の壁も、板を重ねた上に黒布が張ってあるらしく、針の先程の光もささぬ如法暗夜にょほうあんやである。
悪魔の紋章 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
広い竹藪の迷路は、文目あやめも分かぬ闇となった。
妖虫 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)