改悛かいしゅん)” の例文
この場合いいかげんなごまかしはとうてい許されませぬ。なんでも、外国の犯人はあまり改悛かいしゅんするものがないとのことじゃ。
貞固は先ず優善が改悛かいしゅんの状を見届けて、しかのちに入塾せしめるといって、優善と妻てつとを自邸に引き取り、二階にすまわせた。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
「いや、絶対に後悔しているんだが、僕だって聖人君子じゃない。側から何とか条件をつけてくれないと、励みがないから、改悛かいしゅんじつが挙げにくい」
脱線息子 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
事の仔細しさいはもれなく本紙の探知したる所なれども、改悛かいしゅんの余地を与えんため、しばらく発表を見合わせおくべし。
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
この少年に改悛かいしゅんの情無しと見たパラオ支庁の警務課が、彼の流刑の期間を延長し、その上流竄地りゅうざんちをS島よりも更に南方遥か隔たったT島に変更することに決めたためである。
……おぬしはその後の江戸の事情を知るまいが、この春、藤井紋太夫が改悛かいしゅんを誓ったのは、やはり彼の本心ではなく、一時のがれに、老公をあざむき奉ったものでしかない。
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
何うしても斬首ざんしゅの刑に行わるべきであったのが、何ういう事か三宅へ遠島を仰付おおせつけられましたが、大層改悛かいしゅんの効があらわれ、のちしゃになって、此の三次郎は兄玄道の徒弟となり
闇夜の梅 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
とうてい改悛かいしゅんの見込みなき白昼の大盗、十万百万証拠の紙幣を、つい鼻のさきに突きつけられてさえ、ほう、たくさんあるのう、奉納金かね? 党へ献上の資金かね? わあっはっはっ
創生記 (新字新仮名) / 太宰治(著)
実は私はこのことあるをうれいて、前後五回ほど阪井の父をたずねて忠告したのです、それにかかわらずかれの父はかれを厳重にいましめないのです、これだけに手を尽くしても改悛かいしゅんせず
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
承知していながら、決して改悛かいしゅんする必要がないと思うほど、この病弊を芸術的に崇拝しているのである。されば賤業婦の美を論ずるには、極端に流れたる近世の芸術観を以てするより外はない。
妾宅 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
しかし当時の優善の態度には、まだ真に改悛かいしゅんしたものとは看做みなしにくい所があった。そこで五百いお旦暮たんぼ周密にその挙動を監視しなくてはならなかった。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
もし五十川のおばさんがほんとうに自分の改悛かいしゅんを望んでいてくれるなら、その記事の中止なり訂正なりを、おっと田川の手を経てさせる事はできるはずなのだ。
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
先生は堀口生の改悛かいしゅんをひきあいに出して、大いに学ぶところがあるように、コンコンさとした後
苦心の学友 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
「もし、ご改悛かいしゅんがなければ、わたくしは腹を切って、ご先祖さまにお詫びつかまつります」
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
なかにはひざまずいて懺悔告白する者すらあった……長老はそれをおのおの解決したり、和解させたり、訓戒を与えたり、改悛かいしゅんをすすめたりして、最後に一同を祝福して、退出させるのであった。
すると上らないことが分ったから、僕達も今月から改悛かいしゅんして、差当り郷里の親父へ御用金を仰せつける。芳野君は今月の俸給をボーナスぐるみ掏摸すりに取られたと言ってやる
負けない男 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
とまれその方が、わが寛仁かんじんに甘え、すこしも改悛かいしゅんの色なく、将軍の寵におごるさる人物とこころをあわせ、二奸一体にかんいったいとなって、不逞ふていたくらみをつづけ参ったことはいいのがれあるまいが
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「それは/\、しかし小川君が早まって改悛かいしゅんしたのは案外の副産物でしたね」
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
と尾沢生が感心したくらい堀口生の改悛かいしゅんは、いちじるしかった。
苦心の学友 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)