しわ)” の例文
二人のやりの穂先がしわって馬と馬の鼻頭はなづらが合うとき、鞍壺くらつぼにたまらず落ちたが最後無難にこの関をゆる事は出来ぬ。よろいかぶと、馬諸共もろともに召し上げらるる。
幻影の盾 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
白ペンキ塗の厚縁あつぶち燦々きらきらで、脾弱ひよわい、すぐにもしわってはずれそうな障子やからかみしきりの、そこらの間毎まごとには膏薬のいきれがしたり、汗っぽい淫らな声がえかけたりしている。
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)
「今日」と「昨日」とがしわつてゐる!
(新字旧仮名) / 高祖保(著)
藤蔓に頸根くびねを抑えられた櫂が、くごとにしわりでもする事か、こわうなじ真直ますぐに立てたまま、藤蔓とれ、舷と擦れる。櫂は一掻ごとにぎいぎいと鳴る。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
穏戸おんどの瀬戸で、エンヤラヤアノヤア、ソオレ漕げ、ヤアレ漕げ、一丈五尺の、一丈五尺の、しわる、エンヤラヤアノ、エンヤラヤノ、エンヤラヤノ、エンヤラヤノ、エンヤラサノサア。
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)
首を入れた当人は台を引かれると同時に縄をゆるめて飛び下りるという趣向しゅこうである。果してそれが事実なら別段恐るるにも及ばん、僕も一つ試みようと枝へ手を懸けて見ると好い具合にしわる。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)