摺硝子すりガラス)” の例文
頭の上の大電灯の笠——摺硝子すりガラスに切子細工の飾を付けた、何キログラムとも知れぬのが、恐しい勢で頭の上へ落ちて来たのでした。
身代りの花嫁 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
天井は全面が摺硝子すりガラスになっていて、白昼電燈が適当な柔かさをもって輝いてい、床には、ふかふかと足を吸込む豪奢ごうしゃ絨毯じゅうたんが敷きつめられてあった。
鱗粉 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
また梅が散る春寒はるさむの昼過ぎ、摺硝子すりガラス障子しょうじを閉めきった座敷のなか黄昏たそがれのように薄暗く、老妓ばかりが寄集った一中節いっちゅうぶしのさらいの会に、自分は光沢つやのない古びた音調に
銀座 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
広いチャペルの左右には幾つかの長方形の窓框まどわく按排あんばいして、更に太い線にまとめた大きな窓がある。その一方の摺硝子すりガラスは白く午後の日に光って、いかにも岡の上にある夏期学校の思をさせた。
桜の実の熟する時 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
わざと遠慮して勝手口へ回ると、摺硝子すりガラスへ明るいが映って、中はざわざわしていた。あががまちに帳面を持って腰をかけた掛取らしい小僧が、立って宗助に挨拶をした。茶の間には主人も細君もいた。
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
いえの内はむしろ静か過ぎるくらいしんとしていた。摺硝子すりガラスの戸がててある玄関へ来て、ベルを二三度押して見たが、ベルがかないと見えて誰も出て来なかった。宗助は仕方なしに勝手口へ廻った。
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
すると摺硝子すりガラス向側むこうがわで、ちょっと明けなさいと云う声がする。
満韓ところどころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)