揉手もみて)” の例文
手代の常吉が、真っ青な顔で揉手もみてをしながら迎えるのを、眉間に深いシワをきざんだ留五郎はちょいとうなずいただけで、さっさと奥へ通った。
そこへ小さな縁台を据えて、二人の中に、ちょんぼりとした円髷まるまげ俯向うつむけに、揉手もみてでお叩頭じぎをする古女房が一人居た。
陽炎座 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
弥助は揉手もみてをしながら、自分のことのようにニコニコしております。よほど浪人と懇意こんいにしている様子です。
食事後しよくじご気分きぶんまえよりも一そう打寛うちくつろいだものであつたが、彼等かれら或者あるものなお未練みれんがましく私達わたしたちそばつてて、揉手もみてをしながら「キヤンニユスピイク、イングリシユ?」を繰返くりかえした。
微笑の渦 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
「法水君、ダマスクスへの道は、たったこの一つだよ」と検事は熊城と視線を合わせて、さも悦に入ったように揉手もみてをしながら「見給え。すべてが伸子に集注されてゆくじゃないか」
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
元木武夫の両親は揉手もみてをしながら、やがて屋上にあらわれてきた。
白い壁 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
判事は揉手もみてをしながら
甚助は口の過ぎたのに気が付いたものか、揉手もみてをしながら尻込みをしております。
番頭は揉手もみてをしながら、およそもっともらしい調子でこんな事を言うのでした。
五助は何やら不安らしく平次を見上げて、滅茶々々な揉手もみてをして居ます。