掻餅かきもち)” の例文
その書生さんの時も、本宅の旦那様、大喜びで、御酒はあがらぬか。晩の物だけ重詰じゅうづめにして、夜さりまた掻餅かきもちでも焼いてお茶受けに、お茶も土瓶で持ってけ。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
堺屋のおふくろが、僕に掻餅かきもちを焼いてれていたんです。その側には僕の生みの母親もいました。堺屋のおふくろは、焼いた掻餅を普通に砂糖醤油さとうじょうゆにつけて僕に与えました。
河明り (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
自分の好きな塩煎餅しおせんべい掻餅かきもちでもあろうもんなら、もこののものはかまどの下の灰までがおれの物だというような顔をして、平気で菓子鉢に顔を突込んではボリボリと喰べ初める。
二葉亭余談 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
こひねがはくは駕籠かご二挺にちやうならべて、かむろに掻餅かきもちかせながら、鈴鹿越すゞかごえをしたのであると、をさまりかへつたおらんだ西鶴さいかくむかうに𢌞まはして、京阪成金かみがたなりきん壓倒あつたふするにらうとおもふ。……
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「香ばしくておいしい。掻餅かきもちのようね」とかの女はいった。
母子叙情 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)