掛樋かけひ)” の例文
そしてもう半年も前から精進していた他の数巻とあわせて経箱へおさめ、また自身、廊の端の掛樋かけひへ行って、課業のすんだすずりの墨を洗っていた。
私本太平記:11 筑紫帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
庭へ下り、太い掛樋かけひで山から引いて来てある水で顔を洗い、全身を拭うと、冷かな山気が肌に迫る。
木曽御嶽の両面 (新字新仮名) / 吉江喬松(著)
そうしてどの家も雀の住むための瓦の隙間すきまを作らぬために、この村の雀は掛樋かけひに巣くって、大雨の日には流れ落ち、または煙突の掃除をすると、三戸分ぐらいの巣が出ることもまれではない。
渡りの板をわたる時の、暗いなかでの掛樋かけひの水音が寒々しい。そこから一だん踏むと茶堂めいた小部屋があった。
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
次郎は母親にいいつけられて、まきを割り、掛樋かけひを掛けて、野天に出ているすえ風呂をわかしています。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼はそこの掛樋かけひゆか水瓶みずがめから水をくんで、うがいをし初め、独りで髪の毛をなであげていた。
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
粗末な後架こうかを出て、濡れ縁の端の掛樋かけひへ寄って行かれると十四、五歳の童僕わっぱが、下にいて
私本太平記:06 八荒帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
掛樋かけひをもってうら山より秋川あきがわの水をひくときは、しろの水の手に水がれはござるまい」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
裏の流れへ出て、掛樋かけひの水をうつわにうつして来ますと、万太郎はそれをグッと飲んで
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
かねて今宵こよいのことをもくろんでいる裏切うらぎり者は、夕方の炊事かしぎどきを見はからって、とりで用水ようすい——山からひく掛樋かけひ泉水せんすい井戸いど、そのほかの貯水池ちょすいちへ、酔魚草すいぎょそう、とりかぶとなどという
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
掛樋かけひの水も、ポトポトと心ぼそい。
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
掛樋かけひの水は変れども
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)