“扮(やつ)” の例文
「あなたはあの人のいどころを捜していらっしゃる、そのためにそんな姿に身を扮(やつ)して、ずっとこの辺を歩きまわっていらっしゃるのでしょ」
風流太平記 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
同じように仲間小者(ちゅうげんこもの)に身を扮(やつ)して、仇家の偵察にも従事すれば、江戸じゅうを走り廻って、諸所に散在している同士の間に聯絡(れんらく)をも取っていた。
四十八人目 (新字新仮名) / 森田草平(著)
まだ其上に腕車(くるま)やら自転車やらお馬やらお馬車やら折々は故(わざ)と手軽に甲斐々々しい洋服出立のお歩行(ひろひ)で何から何まで一生懸命に憂身(うきみ)を扮(やつ)された。
犬物語 (新字旧仮名) / 内田魯庵(著)
此のお繼の一旦親に成りましたお梅と申す者を尼の姿に扮(やつ)して、私の宅に泊り合せ、私の姉に恋慕を云い掛けました所が
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
そして青年をユアンに扮(やつ)させてお宅へ張り込ませたのですが、結果は、まったく園丁のガリアナ・ホセや給仕頭のガルボたちの申すことがすべて真実であるということを
陰獣トリステサ (新字新仮名) / 橘外男(著)
武者修行と思ふ者一人もなく却て長脇(ながわき)ざしの親方か但(たゞ)し追いはぎ盜賊などの惡漢(わるもの)が扮(やつ)し姿(すがた)と見違へ甚だ迷惑(めいわく)致す事ありと云ひければ亭主は聞て否々(いへ/\)失禮(しつれい)ながら人は見かけに寄ぬものにて韓信(かんしん)とか申人も元は洗濯婆々(せんたくばゝ)の所に食客(ゐさふらふ)に成り居りしとか又人の股(また)を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
毛利小平太(もうりこへいだ)は小商人(こあきゅうど)に身(み)を扮(やつ)して、本所(ほんじょ)二つ目(め)は相生(あいおい)町三丁目、ちょうど吉良左兵衛邸(きらさひょうえやしき)の辻版小屋筋違(すじか)い前にあたる米屋五兵衛こと、じつは同志の一人前原伊助(まえばらいすけ)の店のために
四十八人目 (新字新仮名) / 森田草平(著)
彼はつなが誘拐されたと思い、拾い屋などにまで身を扮(やつ)して捜しまわった。兄は禁じたのである、つなは自分の始末ぐらい自分でする娘だと云った。そのとおりであるし、それ以上であった。
風流太平記 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
真ッ平(ぴら)御免下せえまし、実は私(わっち)らは海賊の手下でござんす、あの旅人に姿を扮(やつ)していたなア小頭の八十松(やそまつ)という者で、貴方を親船へ連れて往って、懐中にある百両余りの金と大小衣服を剥ぎ取って
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)