をのの)” の例文
新字:
が代數は、心配してゐた代數は、危惧にをののきながら問題を讀むと、さあ一つも知らない物許りのやうな氣がした。私は尠からず慌てた。
受験生の手記 (旧字旧仮名) / 久米正雄(著)
唇の不隨意筋が自らをののき出すやうな、眼の血管にかつと血が押し寄せてくるやうな、鳩尾みぞおちが引き締められるやうな、さうした感情の興奮が私の全身に働いた。
猫又先生 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
避姙に至つてはおのれの島の絶滅を豫感して其の前にをののいてゐるものが、そんな事をする譯が無いのである。
それは年齡としけてゆくといふをののきばかりではありません。それらのことは面影に、鏡に見出すより早く氣づいて、却て驚いて鏡を見直すくらゐデリカなものです。
鏡二題 (旧字旧仮名) / 長谷川時雨(著)
無力なる君主は、或は願後身世世、勿復生天王家といひ(劉宋の順帝)、或は願自今以往、不復生帝王家といひ(隋の恭帝)、極端なる恐迫觀念にをののきつつ、危惧憂鬱なる一生を送る。
支那人の妥協性と猜疑心 (旧字旧仮名) / 桑原隲蔵(著)
しゆみて骨々こち/″\しき猛獸の怒號、爭鬪にをのの
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
それ茲におびをののくわが生氣、逐ひやらはれて
をののけるおもひの奧に「我」ありて伏して沈めば
有明集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
次の朝、色をした太子疾が白刃を提げた五人の壯士を從へて父の居間へ闖入する。太子の無禮を叱咤するどころではなく、莊公は唯色蒼ざめてをののくばかりである。
盈虚 (旧字旧仮名) / 中島敦(著)
何處いづこより風は落つ、身もをののかれ
有明集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
をののける身はかくてしんなき瞳
有明集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)