懲役ちょうえき)” の例文
農民二(ややあって)「いま、もぐり歯医者でも懲役ちょうえきになるもの、人だまして、こったなごとしてそれで通るづ筈なぃがべじゃ。」
植物医師:郷土喜劇 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
同志会のためなら恩人を懲役ちょうえきにしてもかまわないと思っていらっしゃる、あなたもぼくも同じです、それがいまぼくにはっきりわかりました
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
「お前達は泥棒だ。橋の渡り賃を払わずにこの河を渡った者は懲役ちょうえきに行くのだ。サア来い。お役所に連れてゆくから」
豚吉とヒョロ子 (新字新仮名) / 夢野久作三鳥山人(著)
わしは当然、おかみの手に捕えられ、獄に投ぜられた。裁判の結果は、死刑にもなるべき所を、刑一等を減ぜられ、終身懲役ちょうえきまった。死刑は免れた。
白髪鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
でもわたしは金がないのだから、このうちにあるものはのこらず売らなければならない。それでも足りないので、わたしは五年のあいだ懲役ちょうえきに行かねばならない。
で、貴方あなたがそのため拘引こういんされて、裁判さいばんわたされ、監獄かんごくれられ、あるい懲役ちょうえきにされるとしてて、それがどうです、この六号室ごうしつにいるのよりもわるいでしょうか。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
「ええ、ついでに懲役ちょうえきにやればいいのに。——でも町内のものは大層気をんで、また相談を開いたんですが、もう誰も引き受けるものがないんで弱ったそうです」
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
男は、五年の懲役ちょうえきを求刑されたよりも、みじめな思いをした。男の罪名は、結婚詐欺であった。
あさましきもの (新字新仮名) / 太宰治(著)
「被告ヲ懲役ちょうえき五年ニしょス!」
柿色の紙風船 (新字新仮名) / 海野十三(著)
いや、それよりもこんなことになるのはどこの国の政治家でもすぐわかる、これはいかんと云うわけでお気の毒ながら諸君をみんな終身懲役ちょうえきにしちまいます。
ビジテリアン大祭 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
泥棒をして懲役ちょうえきにされた者、人殺をして絞首台こうしゅだいのぞんだもの、——法律上罪になるというのは徳義上の罪であるからおおやけ所刑しょけいせらるるのであるけれども、その罪を犯した人間が
模倣と独立 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
懲役ちょうえき五年だぜ。こんどは困ったよ。たのむ。二百円あれば、たすかるんだ。わけは後で話す。兄さんも、改心したんだ。本当だ。改心したんだ、改心したんだ。最後の願いだ。一生の願いだ。
花火 (新字新仮名) / 太宰治(著)
「あの人のは自棄半分パル・デピじゃありません。いわば重なる不幸のためなんです。兄さんのドミートリが懲役ちょうえきになったまま、今ではが知れないのですよ。お母さんは悲嘆のあまり亡くなるし。」
行く先が案じられたのも無理はない。ただ懲役ちょうえきに行かないで生きているばかりである。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
或る友人から「服役中は留守宅の世話云々うんぬん」という手紙をもらい、その「服役」という言葉が、懲役ちょうえきにでも服しているような陰惨な感じがして、これは「服務中」の間違いではなかろうかと思って
未帰還の友に (新字新仮名) / 太宰治(著)