懐中くわいちゆう)” の例文
旧字:懷中
神事じんじをはれば人々離散りさんして普光寺に入り、はじめ棄置すておきたる衣類いるゐ懐中くわいちゆう物をるに鼻帋はながみ一枚だにうする事なし、かすむれば即座そくざ神罰しんばつあるゆゑなり。
どうせ飛び出すのだ、何しろ訪ねて見ようと銀之助は懐中くわいちゆうを改めると五円札が一枚とあと小銭こせんで五六十銭あるばかり。これでも仕方がない不足の分は先方むかふの様子を見てからの事とぐ下にりた。
節操 (新字旧仮名) / 国木田独歩(著)
神事じんじをはれば人々離散りさんして普光寺に入り、はじめ棄置すておきたる衣類いるゐ懐中くわいちゆう物をるに鼻帋はながみ一枚だにうする事なし、かすむれば即座そくざ神罰しんばつあるゆゑなり。
そのまゝ樹下きのもとに立せ玉ふ石地蔵𦬇いしのぢぞうぼさつまへならびたちながら、懐中くわいちゆうよりかゞみいだして鉛粉おしろいのところはげたるをつくろひ、唇紅くちべになどさしてよそほひをなす、これらの粧具しやうぐをかりに石仏せきぶつかしらく。
そのまゝ樹下きのもとに立せ玉ふ石地蔵𦬇いしのぢぞうぼさつまへならびたちながら、懐中くわいちゆうよりかゞみいだして鉛粉おしろいのところはげたるをつくろひ、唇紅くちべになどさしてよそほひをなす、これらの粧具しやうぐをかりに石仏せきぶつかしらく。