しと)” の例文
「大塔宮様にお目にかかり、許すとのお言葉承まわりたさに、この年月諸所方々を、お後しとうておりまするもの……」
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
古来幾多の世捨人よすてびとは人間の死ということに心を置いて、樹下石上の旅にさまようた。西行さいぎょう宗祇そうぎ芭蕉ばしょうもまたそれら世捨人のあとをしとうて旅にさまようた。そうして宗祇も芭蕉も旅に死んだ。
俳句への道 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
色とりどりな秋の小径こみちを森の古巣ふるすへ走って行く一ぴき白狐びゃっこの後影を認め、その跡をしとうて追いかける童子どうじの身の上を自分に引きくらべて、ひとしお母恋いしさの思いに責められたのであろう。
吉野葛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
……実は、あの老母が、幼少からいつくしんでいた末娘が、近頃やまいのため、母のことのみ申し、うわ言にも、母よ母よと恋い、起きても、会いたや、一ト目会いたやと、泣きしとうてやまぬのでおざる
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
白いおぐし御方おんかたを、又無いものとしとうては
白髪小僧 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
草履しとふて
おさんだいしよさま (新字旧仮名) / 野口雨情(著)
むこが自分をしとうて来るように仕向けたがる。
(新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)