わなな)” の例文
幽かな音をたてては食み盡くす蠶の眼のふちの無智な薄褐色かばいろわななきを凝と眺めながら子供ごころにも寂しい人生の何ものかに觸れえたやうな氣がした。
思ひ出:抒情小曲集 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
ともすれば、嗚咽おえつと変りそうなわななき声を、実平はいて、励ましながら、言葉をつづけた。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
やはり宮枝はわななく、男はみな殺人魔。柔道を習いに宮枝は通った。社交ダンスよりも一石二鳥。初段、黒帯をしめ、もう殺される心配のない夜の道をガニ股で歩き、誰か手ごめにしてくれないかしら。
好奇心 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
私は「夜」というものがこはかつた。何故にこんな明るい晝のあとから「夜」といふ厭な恐ろしいものが見えるのか、私は疑つた、さうして乳母の胸にひしと抱きついては眼の色も變るまでわなないたものだ。
思ひ出:抒情小曲集 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
神経しんけい知覚ちかくとはいたましきほどわななけども、ちからなきほねなしよ。
東京景物詩及其他 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
血のごともくもふるがくわななくなかに
第二邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
薄青き光線のかさかけてわななく夜なり。
思ひ出:抒情小曲集 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)