愛鷹あしたか)” の例文
富士、愛鷹あしたか、箱根連山など。——総じて、この半島伊豆の地上では、そうした風土や自然が、人間の容姿や気風にまでよくうつっていた。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その枝は不二と愛鷹あしたかとを振り分けて、ことに愛鷹の両尖点りやうせんてん(右なるは主峰越前嶽にして位牌ゐはいヶ嶽は左のこぶならむ)は、をどつて梢に兎耳とじを立てたり
霧の不二、月の不二 (新字旧仮名) / 小島烏水(著)
次第高になつてゆく愛鷹あしたか足柄あしがらとの山あひの富士の裾野がずつと遠く、ものゝ五六里が間は望まれるのである。然し、その日は私は頂上まで行き度くなかつた。
愛鷹あしたか山の南麓なる浮島ヶ原なども、古来有名なためにかえってもったいぶった伝説もあるが、決して島が浮遊するわけではなく、神代紀にいわゆる浮渚ふと在平処の浮渚で
地名の研究 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
紅塵万丈の熱鬧ねっとう世界を遠く白雲緬邈めんばくの地平線下に委棄しきたって、悠々として「四条五条の橋の上」に遊び、「愛鷹あしたか山や富士の高峰たかね」の上はるかなる国に羽化登仙うかとうせんし去るのである。
謡曲黒白談 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
幸いに晴れていて、富士も見えれば愛鷹あしたかも見える。伊豆の岬、三保の松原、手に取るようでありますが、七兵衛は海道第一の景色にも頓着なく、例の早足で、すっすと風を切って上って行く。
大菩薩峠:07 東海道の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
富士の裾野のうちで、富士をうしろにし、真正面に足柄山、右に愛鷹あしたか山、左に名も知らぬ外輪山風の低い山脈を置いた間の広大な原野を土地では大野原と呼んでいる。
みなかみ紀行 (新字新仮名) / 若山牧水(著)
手近の愛鷹あしたか山さえ、北の最高峰越前岳から、南の位牌いはい岳を連ぬるところの、のこぎりの歯を立てた鋸岳や、黒岳を引っくるめて、山一杯に緑のほのおを吐く森林が、水中の藻の揺らめくように
不尽の高根 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
函南かんなみの裾野から足柄、愛鷹あしたかのふもとへかけ十里は人馬のとどろきといってよい。
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
上州横室よこむろの赤城神社、駿河の愛鷹あしたか明神、越中の立山たてやま権現、大和では纏向まきむく穴師坐兵主あなしにますひょうず神社、東北では羽後飽海あくみ郡の国幣こくへい中社大物忌おおものいみ神社、同雄勝おがち郡大沢の荒羽波岐あらはばき神社、北秋田の七座ななくら神社森吉神社等
年中行事覚書 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
離れ離れに静かな水を伏せている、函根、御阪、早川連嶺などが、今の雨ですっきりと洗われて、鮮やかな緑靛りょくてん色をしている、愛鷹あしたかを超えて伊豆半島の天城山が、根のない霞のように
白峰山脈縦断記 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
駿河するがなる沼津より見れば富士が嶺の前に垣なせる愛鷹あしたかの山
その尖端が愛鷹あしたか山の方向へと流れて行く、振り返れば、箱根火山彙かざんいには、雲が低く垂れて、乙女峠から金時山の腰へかけて、大河の逆流するばかり、山と山との間は、幾つにも朝雲がたむろして
雪中富士登山記 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
駿河するがなる沼津より見れば富士が嶺の前に垣なせる愛鷹あしたかの山
村住居の秋 (新字旧仮名) / 若山牧水(著)
大君の御料の森は愛鷹あしたか百重ももへなすひだにかけてしげれり
富士から愛鷹あしたかにかけては
樹木とその葉:13 釣 (旧字旧仮名) / 若山牧水(著)