情緒じやうしよ)” の例文
親切は直ぐに情緒じやうしよを刺㦸して、あなたの顏は優しい表情を浮べるやうになり、言葉の調子は穩やかになつて來た。
かく僕にも手紙を寄せた女性の読者のゐることは疑ふべからざる事実である。が、彼等は僕に対するや、水上みなかみ君に対するやうに纏綿てんめんたる情緒じやうしよを示したことはない。
変遷その他 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
自分はいか程溢るゝ感激、乱るゝ情緒じやうしよもだえても其れを発表すべく其れを訴ふべき音楽を持つて居ない国民であるのだ。かゝる国民かゝる人種が世界のにあるであらうか。
黄昏の地中海 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
翌日よくじつ宗助そうすけれいごときて、平日へいじつかはことなく食事しよくじました。さうして給仕きふじをしてれる御米およねかほに、多少たせう安心あんしんいろえたのを、うれしいやうあはれなやう一種いつしゆ情緒じやうしよもつながめた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
一種の情緒じやうしよかもし出さずには居ません。