情人いいひと)” の例文
「偉そうなこと云ってもだめよ、悠ちゃんなんか、梅干の種を鼻の穴じゃないの、——くやしかったら芸妓の情人いいひとでもつくってごらんなさい」
桑の木物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
「あら、剣舞をしてるわ、ちょいと、田舎ものが宿を取りはぐしたようで、見っともないよ、私の情人いいひとの癖にさ。」
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ふ、ふ、ふ、まだ雪之丞を手に入れもしないのに、もう自分の情人いいひとのことをかれこれ言われてでもいるように、やきもちを焼いている。まあ、待っていなさいよ。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
小滝こたき落籍らくせき」という見出しで、伊勢崎の豪商に根曳ねびきされる話がひやかし半分に書いてある。小滝には深谷の金持ちの息子むすこで、今年大学に入学した情人いいひとがあった。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
……エヘン……だから怨むならばだ……いいかい……怨むならば、お前さん達の情人いいひとにこんなステキな智恵を授けた、ヤングというえらい人を怨まなくちゃいけないんだよ。
支那米の袋 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「売女だろうと、あなた方に、買って下さいとは申しませんよ。お十夜さんは私の情人いいひと、地べたで話をしていようと、屋根へ上がって相談をしようとも、お他人様のご心配はいらないでしょう」
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「あの子に、このごろ情人いいひとが出来たってね」
両国の秋 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
情人いいひとらしく扱われたような気がして? そんな負惜みをお言いなさんなよ。」軽く卓子台ちゃぶだいたなそこで当てて
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
エヘン……袋の中の別嬪べっぴんさんたち。よく耳のあかをほじくって聞いておくんなハイよ。いいかね。……お前さん達はみんな情人いいひとと一緒になりたさに、こんな姿に化けてここへかつぎ込まれて来たんだろう。
支那米の袋 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
(もう、情人いいひとぶって)
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
蝶吉の母は根岸の情人いいひとなくなってから、世を味気なく、身をただ運命に任せていたので、いうことに逆らわず、芳町から再勤したが、足りない金子かねは、家財を売って
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
又……お前さん達の情人いいひとも、おんなじ料簡で、お前さん達をここまで連れて来たんで、決して悪気じゃなかったんだろうが、残念な事には、それが出来なくなっちゃったんだ。いいかい……だからね。
支那米の袋 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「わたしの情人いいひとさ」
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「何もそんなに胸までどきつかせるには当らない、大した用でもなかろうよ。たかがお前この頃情人いいひとが出来たそうだね、お目出度いことよ位なことをわれるばかりさ。」
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「あら、情人いいひとなら兄さんですわ、」
吉原新話 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「誰の身代りだな、情人いいひとのか。」
吉原新話 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)