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悸
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おび
ふりがな文庫
“
悸
(
おび
)” の例文
ただ、彼女の場合は、その印象が、ひと口で云へば強烈であり、相手の調子になにか
悸
(
おび
)
えさせるやうなものがありすぎたからであらう。
双面神
(新字旧仮名)
/
岸田国士
(著)
はじめは勤人が居たんだが、俺の鼾に子供が
悸
(
おび
)
えて仕方がないと云ふので、向方が越して知り合ひのあゝいふ師匠が移つて来たのだつたさ。
奇友往来:(引越しをする男)
(新字旧仮名)
/
牧野信一
(著)
まことに物騒な世のなかで、わたくし共のような若い者は何が何やら無我夢中で、唯々いやな世の中だと
悸
(
おび
)
え切っていました。
怪談一夜草紙
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
それは君の服装の為か、空を濁らせた煙の為か、或は又僕自身も大地震に
悸
(
おび
)
えてゐた為か、その辺の
消息
(
せうそく
)
ははつきりしない。
大正十二年九月一日の大震に際して
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
灯の影もみえない藪影や、夜風にそよいでゐる
崖際
(
がけぎは
)
の
白百合
(
しらゆり
)
の花などが、
殊
(
こと
)
にも彼女の心を
悸
(
おび
)
えさせた。でも、彼の家を車夫までが知つてゐるのでいくらか心強かつた。
或売笑婦の話
(新字旧仮名)
/
徳田秋声
(著)
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無智な、臆病な田舎ものの女共の魂は、こんなことにも
悸
(
おび
)
えさせられて居るのであつた。やがて門の前へ来た。門は真黒な鉄の扉がどつしりと見る目を圧して固く鎖してゐる。
夜烏
(新字旧仮名)
/
平出修
(著)
それというのは、兎ならまだ幾分人間に近いかも知れないが、この頃は鳩なんかでやってみた実験の結果を、すぐ人間に適用しようという話が新聞に出たりして、少々
悸
(
おび
)
えていたからである。
兎の耳
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
速記本で読まされては、それほどに凄くも怖しくも感じられない怪談が、高座に持ち出されて圓朝の口に上ると、人を
悸
(
おび
)
えさせるような凄味を帯びてくるのは、じつに偉いものだと感服した。
我が円朝研究:「怪談牡丹灯籠」「江島屋騒動」「怪談乳房榎」「文七元結」「真景累ヶ淵」について
(新字新仮名)
/
正岡容
(著)
(おつやが「このお客様」と云った時、太吉はまた
悸
(
おび
)
えておつやに
獅噛
(
しが
)
み付く。おつやも気がついて、旅人をみかえる。)
影:(一幕)
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
しかもその途端に一層私を
悸
(
おび
)
えさせたのは、突然あたりが赤々と
明
(
あかる
)
くなって、火事を想わせるような煙の
匀
(
におい
)
がぷんと鼻を打った事でございます。
疑惑
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
といふ、安藤の
悸
(
おび
)
えたやうな声に続いて、細々と絶え入るやうな、女の何ごとかを訴へる気配がした。
泉
(新字旧仮名)
/
岸田国士
(著)
若者が、
悸
(
おび
)
えた虫のやうに息づいてゐるにも関はらず、彼等は飽くまでも明るく、享楽に充ちてゐた。
環魚洞風景
(新字旧仮名)
/
牧野信一
(著)
これでは白米禁止の噂に
悸
(
おび
)
えるのも無理もない話である。
兎の耳
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
私は
悸
(
おび
)
えた眼を挙げて、悄然と坐っている相手の姿を見守った。吐息をしたのは彼だろうか。それとも私自身だろうか。
疑惑
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
(正親は御幣を投り出して逃げ去る。花園もいよ/\
悸
(
おび
)
えて逃げかゝれば、園生は縋りながら引摺られてゆく。)
能因法師
(旧字旧仮名)
/
岡本綺堂
(著)
もしや幽霊かとお菊は又
悸
(
おび
)
えて首を
悚
(
すく
)
めると、女は
彼女
(
かれ
)
の枕もとへすうと這い寄って来て
低声
(
こごえ
)
で呼んだ。
黄八丈の小袖
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
刀に手をかけたと見て、平作をおさえていた駕籠屋や人足共は、あっと
悸
(
おび
)
えて飛び退きました。
三浦老人昔話
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
庭先には
杜若
(
かきつばた
)
の咲いてゐる池があつて、腰元の幽靈はその池の底から浮き出したらしく、髪も着物も酷たらしく
濕
(
ぬ
)
れてゐた。幽靈の顔や形は女小兒を
悸
(
おび
)
えさせるほどに物凄く描いてあつた。
半七捕物帳:01 お文の魂
(旧字旧仮名)
/
岡本綺堂
(著)
「あ、あれでござります。」と、おもよは俄かに
悸
(
おび
)
えるようにささやいた。
馬妖記
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
速記本で読まされては、それほどに凄くも怖ろしくも感じられない怪談が、高坐に持ち出されて円朝の口にのぼると、人を
悸
(
おび
)
えさせるような凄味を帯びて来るのは、実に偉いものだと感服した。
寄席と芝居と
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
お道は
悸
(
おび
)
えた心持で一夜を明した。
半七捕物帳:01 お文の魂
(旧字旧仮名)
/
岡本綺堂
(著)
悸
漢検1級
部首:⼼
11画
“悸”を含む語句
動悸
悸々
悸然
悸乎
悸気
心悸
心悸亢進
三悸
動悸動悸
悸動
悸毛
悸病
慟悸
神悸
胸悸
驚悸