悪気わるげ)” の例文
旧字:惡氣
『去年ですか。わたしは又、其点そこに気が付かなかつたもんですから……』と、孝子は少しきまり悪気わるげにして、其児の名を別の帳簿に書入れる。
足跡 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
わたしの骨折ほねおりなんかは、なんでもございませんわ。(画家はんの事か、分らぬらしく、娘の顔を見る。娘は悪気わるげに。)
もう忘れていた幼名を呼ぶばかりでなく、悪気わるげのこもったののしり声に、範宴も性善坊も、ちょっと、きもを奪われて立っていた。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「失礼いたした、袴氏、悪気わるげでやった所業ではござらぬ。まずご勘弁を願うとして、拙者ことは柴田しばた三郎兵衛。本郷三好坂に塾を構え兵学の講義をいたしおる者」
剣侠受難 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
と言って小夜子のこの行動にも別に意志があるわけでもなかった。わかいおりに悪気わるげのない不良少女団長であった彼女の、子供らしい思い附きにすぎないのであった。
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
やや久しゅうして男極めて心地悪気わるげに顔など欠けて血出でながら食物ども持ち来って饗し喜ぶ事限りなし、蜈蚣を切り放って木を伐り懸けて焼きう、さて男釣り人どもに礼を厚く述べ
「私が見たところでは、この娘の顔には、そんな悪気わるげ微塵みじんもない——」
与八は一時の怒りに道庵先生へ武者振むしゃぶりついてみましたけれども、もともと悪気わるげがあるのではないですから、持扱い兼ねていると、道庵先生はいい気になって、与八の頭へ噛りついたり引っ掻いたり
大菩薩峠:02 鈴鹿山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
悪気わるげでなく、そういって、笑いながら、承諾した。
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
お重はかえってきまり悪気わるげ躊躇ちゅうちょした。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
(気まり悪気わるげに内へ引っこむ)
瞼の母 (新字新仮名) / 長谷川伸(著)
悪気わるげに。)そんな訳ではございませんが、ふいとそう思ったもんですから。それにことばのはずみですわ。