悠然ゆつくり)” の例文
あいちやんはほか別段べつだん用事ようじもなかつたので、大方おほかたしまひにはなにことはなしてれるだらうとおもつて悠然ゆつくりつてゐました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
勘次かんじおほはれたやうで心細こゝろぼそきりなかに、其麽そんなことでいちじるしく延長えんちやうされた水路すゐろ辿たどつてながら、悠然ゆつくりとしてにぶさをてやうをするのにこゝろ焦慮あせらせて
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
『まア、それでは、茶漬でも食つて……、己は役所から帰つて来てから悠然ゆつくりと話をしよう』と父は立ち上つた。
三四郎が不図其横顔を見ると、どうも上京の節汽車のなかで水蜜桃を沢山食つた人の様である。向ふは気がつかない。茶を一口ひとくちんでは烟草を一すひすつて、大変悠然ゆつくり構へてゐる。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
「敷島」を出して成るべく悠然ゆつくりと喫ひ出したが、一分經つても、二分過ぎても、まだお誂へが來ない。と、渠は立つて行つて其古足袋を、壁の下の隅に、大きな鼠穴が明いてる所へヘシ込んで了つた。
病院の窓 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
れで失敬する、家内かないの室ででも悠然ゆつくり遊んで行き給へ
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
そして再び支那朝鮮の伝道状態を視察した後に帰つてくるからその時に悠然ゆつくり会ふことにすると伝言をして朝鮮へ渡つた。栄一はこの五百五十円を心より感謝した。