御行おぎょう)” の例文
ちょうど、それと前後して、御行おぎょうの松の下を走る二人の者。前に手を引いているのはお絹で、あとのは千隆寺の住職。二人とも跣足はだし
大菩薩峠:23 他生の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
それは根岸御行おぎょうの松に住んでいた頃の物語であるが、ある日立派な侍が沢山の進物を供に持たせ北斎の陋屋ろうおくを訪ずれた。
北斎と幽霊 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
それから根岸ねぎし御行おぎょうの松、亀井戸かめいど御腰掛おこしかけの松、麻布あざぶには一本松、八景坂はっけいざかにも鎧掛よろいかけの松とか申すのがありました。
散柳窓夕栄 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
がアーッと二、三羽のからす——御行おぎょうの松のこずえを打って、薄陽の残る御隠殿ごいんでんの森の暮色へと吸いこまれてゆく。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
だが、それにも拘らず、私は彼女の指定して来た時間に、御行おぎょうの松の下の、あの化物屋敷へ出向いて行った。
陰獣 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
その晩、ガラッ八の八五郎が、根岸の百姓町にかかったのは亥刻よつ(十時)を少し廻った頃、御行おぎょうの松の手前を右へ折れて、とある寮の裏口へ、忍ぶ風情に身を寄せました。
雪之丞、孤軒老師が、この付近根岸御行おぎょうの松に近く住んでいるといっていたのを思い出した。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
神尾主膳が戻って来たのでないことは確かだが、因果なことに、その二人が、御行おぎょうの松の根元へ来て、どっかと腰をおろしてしまったことです。
大菩薩峠:23 他生の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
亀井戸普門院かめいどふもんいん御腰掛松おこしかけまつ柳島妙見堂やなぎしまみょうけんどうの松、根岸ねぎし御行おぎょうまつ隅田川すみだがわ首尾しゅびまつなぞその他なおいくらもあろう。
ままよ、面倒くさい、打ッちゃらかして行けという気なのでしょう、そのまま御行おぎょうの松の先から横丁へ影を隠して、やがて上野のすそから山下の通りへ出ました。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ほどなく、根岸の御行おぎょうの松に近いところへ、かなりの広い屋敷を借受けて、そこへ移り住んだぬしというのが、別人ならぬ神尾主膳でありました。
大菩薩峠:22 白骨の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
麻布網代町あざぶあみしろちょう小石川白山こいしかわはくさん渋谷荒木山しぶやあらきやま亀戸天神かめいどてんじんなんぞいつか古顔となり、根岸ねぎし御行おぎょうまつ駒込神明町こまごめしんめいちょう巣鴨庚申塚すがもこうしんづか大崎五反田おおさきごたんだ、中野村新井あらい薬師やくしなぞ
桑中喜語 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
その茶寮の縁先からは、遠からぬ所の御行おぎょうの松が、夜の空を摩してのぞまれますし、広い庭は、雪見燈籠ゆきみどうろう空堀からぼり那智なち石も、落葉にまって冬ざれの霜の荒れにまかせてあります。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
根岸の御行おぎょうの松の下の、神尾主膳の新屋敷の一間で、青梅おうめの裏宿の七兵衛が、しきりに気障きざ真似まねをしています。
大菩薩峠:24 流転の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
エエよろしゅうございますとも、なにしろ、御行おぎょうの松から御隠殿ごいんでん——あの水鶏橋くいなばしの辺は、昼でも薄気味のわるい所でございますからな……。夜のお使いは、あんまりゾッとしませんや。
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ここは呉竹くれたけの根岸の里の御行おぎょうの松、番町だの、四谷だの、何を言っているのだ、そんなことで訪ね先がわかるものか、もっと要領のよい名ざしがありそうなものだと
大菩薩峠:32 弁信の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
いったん、姿をかくした七兵衛が、また御行おぎょうの松の下に姿を現わしたのはその時で
大菩薩峠:25 みちりやの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
なるほど、この御行おぎょうの松の上へのぼると、呉竹くれたけの根岸の里の寺々がよく見えます。
大菩薩峠:23 他生の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
夜のおそきをいとわず、御行おぎょうの松の下屋敷へかえって来て、戸を叩くと、まだ寝ていなかったらしいお絹が、直ぐに戸をあけてくれたのを見ると、今日は、でかでかと大丸髷おおまるまげのしどけない姿。
大菩薩峠:41 椰子林の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)