御祝儀ごしゅうぎ)” の例文
嘉永版かえいばんの『東都遊覧年中行事とうとゆうらんねんちゅうぎょうじ』にも、『六月朔日ついたち賜氷しひょうせつ御祝儀ごしゅうぎ、加州侯より氷献上、おあまりを町家ちょうかに下さる』と見えている。
顎十郎捕物帳:08 氷献上 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
御誕生は正月十一日お蔵開きの日で、お坊さんでございますから、目出たいと申して御祝儀ごしゅうぎを戴いたのを覚えて居ります
名人長二 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
その男は芸者は幇間ほうかんを大勢集めて、かばんの中から出したさつたばを、その前でずたずたに裂いて、それを御祝儀ごしゅうぎとかとなえて、みんなにやるのだそうです。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「え、ことわってしまうんですか。あら、おかしいわね。御祝儀ごしゅうぎがいただけるのに、房枝さんは慾がないわねえ」
爆薬の花籠 (新字新仮名) / 海野十三(著)
それを御祝儀ごしゅうぎとも苗祝とも名づけて、常例にしていた土地も遠国にはあるが、蕉門しょうもんの人たちの熟知したきょう江戸えど中間の田舎には、近世はもうあまり聞かなかったのである。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
きょうはその初日だったので、御祝儀ごしゅうぎに浜の家で支那料理をおごって来たところだと言いました。
生々流転 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
しかし御肴代おさかなだいもしくは御祝儀ごしゅうぎ何両かの献上金を納めさせることなしに、かつてこの街道を通行したためしのないのも日光への例幣使であった。人殺しはもってのほかだという。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
『はい、今晩は』ッて、澄ましてお客さんの座敷へはいって来て、踊りがすむと、『姉さん、御祝儀ごしゅうぎは』ッて催促するの。小癪こしゃくな子よ。芝居は好きだから、あたいよく仕込んでやる、わ
耽溺 (新字新仮名) / 岩野泡鳴(著)
そうときまりますと、私への御祝儀ごしゅうぎとしてでございましょうか、美しい島原模様に染め上げた、絞縮緬しぼりちりめんの振袖と、絵羽えば模様の長襦袢、それに、絞塩瀬しぼりしおせの丸帯から、帯じめ、草履にいたるまで
両面競牡丹 (新字新仮名) / 酒井嘉七(著)
揃ったかと思うと、屠蘇を祝い御祝儀ごしゅうぎをもらって後口へ廻るものもあった。
縮図 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
この実懇になろうとは、心やすくなろうとの意味であって、その言葉を武士の客からかけられた旅館の亭主ていしゅは、必ず御肴代おさかなだいの青銅とか御祝儀ごしゅうぎの献上金とかをねだられるのが常であった。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
商「一日一貫文いっかんもん、其の代り御祝儀ごしゅうぎには及びません」
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「妻籠の方への御祝儀ごしゅうぎにかい。扇子せんす鰹節かつおぶしぐらいでよかないか。」
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)