得立えた)” の例文
と寄ってたかって声も得立えたてない女を、びしびしとさいなんでいる有様、見兼ねた新九郎は前後を忘れてばらばらと躍り出した。
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
に飽きた金魚のように口をモグモグさせながらも、あまりの事に声を得立えたてず、両手の指を交る交るに突き出して、前方に立ちふさがる、海鼠塀なまこべいの土蔵を指すのでした。
とき恥辱はぢ恐怖おそれとによわきもののこゑをも得立えたてず、いたみ、かなしみ、けるかたちよそほはざるに愁眉しうび泣粧きふしやう柳腰りうえうむちくじけては折要歩せつえうほくるしみ、金釵きんさいしては墮馬髻だばきつ顯實けんじつす。
唐模様 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
こっちでお米が声を筒抜つつぬかせた。——ハッと思って眼をみはるとお藤の体はグッタリして、仲間ちゅうげんの脇の下にい込まれ、声も得立えたてずズルズルと川縁かわべりへ。
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)