後姿うしろつき)” の例文
一刷ひとはけ黒き愛吉の後姿うしろつき朦朧もうろうとして幻めくお夏のそびらおおわれかかって、玉をべたる襟脚の、手で掻い上げた後毛おくれげさえ、一筋一筋見ゆるまで、ものの余りに白やかなるも
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
と会釈して、スッとった所を見ると、スラリとした後姿うしろつきだ。ああ、ふうだ、と思っているうちに、もう部屋を出て了って、一寸ちょっと小腰をかがめて、跡を閉めて、バタバタと廊下を行く。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
てすけとくてく峠へ押上おしのぼ後姿うしろつきを、日脚なりに遠く蔭るまで見送りましたが、何が、貴辺あなた
星女郎 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
まず最初に容貌かおだちを視て、次に衣服なりを視て、帯を視て爪端つまさきを視て、行過ぎてからズーと後姿うしろつきを一べつして、また帯を視て髪を視て、その跡でチョイとお勢を横目で視て、そして澄ましてしまう。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
跣足はだしで路しるべをしたお婆さんの志、その後姿うしろつきも、尊いほどにしのばれます。
河伯令嬢 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
脱心ぬかりたりと心急立せきたち、本郷のとおりへ駈出でて、東西を見渡せば、一町ばかりさきに立ちて、日蔭を明神坂の方へ、急ぎ足に歩み行く後姿うしろつきはその者なれば、遠く離れて見失わじと、裏長屋の近道をくぐりて
活人形 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)