弾手ひきて)” の例文
日本人が西洋の楽器を取ってならす事はならすが音楽にならぬと云うのはつまり弾手ひきての情が単調で狂すると云う事がないからで
根岸庵を訪う記 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
十勝の山奥に来て薩摩琵琶とは、思いかけぬ豪興ごうきょうである。弾手ひきて林学士りんがくしが部下の塩田君しおだくん鹿児島かごしま壮士そうし。何をと問われて、取りあえず「城山しろやま」を所望しょもうする。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
かの香港ホンコンへ志し給ふ若き人達の中よりも弾手ひきて歌ひ手のかはがはさふらひしは物優しき限りに覚え申しさふらふ
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
対手あいて弾手ひきてや三味線の方のひとも現れて来て、琴の会のようなにぎわしいことになっている。
江木欣々女史 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
場所は寺町てらまち四条の浄教寺で、京都図書館長の湯浅半月氏を始め二三の弾手ひきてが集まつたが、聴衆きゝてはいつも十人そこ/\で、それも初めの一二段を聴くと、何時いつの間にかこそ/\逃げ出して
跡から弾手ひきてにお見まい申すぞ。
ことの方の弾手ひきても多い。長唄三味線の方も多い。歌は、音蔵おとぞうという立唄たてうたいの人の妹で、おかねちゃんという、それは実にい声の娘と——その人は惜しくも亡くなったが——その姉さんとが主であった。
朱絃舎浜子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)