幾疋いくひき)” の例文
ヘルンはまたねこが特別に好きであった。松江に居た時も焼津に居た時も、道に捨猫さえ見れば拾って帰り、幾疋いくひきでもって育てた。
……あかいとで、あししるしをつけた幾疋いくひきかを、とほ淀橋よどばしはうみづはなしたが、三日みつか四日よつかごろから、をつけて、もとのいけおもうかゞふと、あしいとむすんだのがちら/\る。
番茶話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
この北海の上ばかりでも、幾疋いくひきの子供をなくした海豹がいるか知れない。しかし、お前は、子供にやさしいから一倍悲しんでいるのだ。そして、私は、それだからお前をかわいそうに思っている。
月と海豹 (新字新仮名) / 小川未明(著)
……樹の枝じゃ無い、右のな、そのがけの中腹ぐらいな処を、熊笹くまざさの上へむくむくと赤いものがいて出た。幾疋いくひきとなく、やがて五六十、夕焼がそこいらを胡乱うろつくように……みんな猿だ。
朱日記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)