巨木きょぼく)” の例文
新月号が火星のふしぎな巨木きょぼくの林を横にながめながら、まっ白い砂漠の上に砂煙をうしろへまきあげつつ着陸したところは、実に壮観であった。
三十年後の世界 (新字新仮名) / 海野十三(著)
わたしは海面よりもずっと下に生えているめずらしい植物を見ることができました。それらは森の中の巨木きょぼくのように、幾尋いくひろもあるくきをわたしのほうへさし上げていました。
素足すあし草履穿ぞうりばきにて、その淡き姿を顕わし、しずかでて、就中なかんずく杉の巨木きょぼくの幹にりつつ——
多神教 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
家康いえやすどのからもご領地りょうち巨木きょぼく人夫にんぷ、おびただしい合力ごうりきでございます」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いまは、運命に任せて目をつむると、と風も身も動かなく成つた。我に返ると、わしおおいなるこずえに翼を休めて居る。が、山の峰のいただきに、さながら尖塔せんとうの立てる如き、雲をつらぬいた巨木きょぼくである。
妖魔の辻占 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)