嵐山らんざん)” の例文
………午後敏子が誘いに来、嵐山らんざん電車の大宮おおみや終点で木村さんと落ち合い、三人で嵐山あらしやまに行く。これは敏子の発議によるのだそうであるが、まことによいことを思いついてくれた。
(新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
「その鼻を廻ると嵐山らんざんどす」と長いさおこべりのうちへし込んだ船頭が云う。鳴るかいに送られて、深いふちすべるように抜け出すと、左右の岩がおのずから開いて、舟は大悲閣だいひかくもとに着いた。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
これは嵐山らんざん戸無瀬となせの滝を目の前に控へてゐるので、滝はわざかなかつたのだ。
可愛かわいや一向専念の誓を嵯峨さが釈迦しゃかたてし男、とし何歳いくつぞ二十一の春これより風は嵐山らんざんかすみをなぐってはらわた断つ俳諧師はいかいしが、ちょうになれ/\と祈る落花のおもしろきをもながむる事なくて、見ぬ天竺てんじくの何の花
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
嵐山らんざんへの途中太秦寺うずまさでらというのに寄った。
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
世界を輪切りに立て切った、山門の扉を左右にさっひらいた中を、——赤いものが通る、青いものが通る。女が通る。小供が通る。嵯峨さがの春を傾けて、京の人は繽紛絡繹ひんぷんらくえき嵐山らんざんに行く。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
嵐山らんざんへ行くところも見た」
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)