屈托くつたく)” の例文
よく/\の事でせう、錢形平次は額に煙草を吸はせて、初秋のケチな庭を眺めるでもなく、ひどく屈托くつたくして居るのです。
上部うはべからると、夫婦ふうふともさうもの屈托くつたくする氣色けしきはなかつた。それは彼等かれら小六ころくことくわんしてつた態度たいどついてもほゞ想像さうざうがつく。流石さすが女丈をんなだけ御米およねは一二
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
... 江戸あたりのほこりの中には、お前の気にかなつたものは有るまいが、ト云つて山の中にも無しの、ほんに困つて仕舞しまうたよ」と首傾けて屈托くつたくさまなりしが「ほう」と一つおのれひざたゝきつ
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
陰鬱いんうつ! 屈托くつたく! 寂寥せきれう! そしてぼくには何處どこかに悲慘ひさんかげさへもえるのである。
湯ヶ原より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
屈托くつたくのない笑顔して
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
それは、權力と因習に押し付けられてゐる、日頃の屈托くつたくに對する、僅かな息拔きでもあり、若い娘達を集めての、戀の狩人達の冒險でもありました。
銭形平次捕物控:315 毒矢 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
屈托くつたくを知らない男の氣樂さうな後姿が、兎もすれば神經質になる平次を、どんなに力づけてくれるかわかりません。
暫く經つて、平次は顏を擧げました、何んとなく屈托くつたくした調子です。
お舟は屈托くつたくのない樣子で迎へました。