小逕こみち)” の例文
いつ苔香園たいこうえんとの話をつけたものか、庭のすみに小さな木戸を作って、その花園の母屋おもやからずっと離れた小逕こみちに通いうる仕掛けをしたりした。
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
女は別れる前に、ある晩笹村と外で飲食いをした帰りに、暗い草原の小逕こみちを歩きながら言った。女は口に楊枝ようじくわえて、両手ですそをまくしあげていた。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
両方がずっと田圃で、田のあぜを伝って、畷とも道ともつかない小逕こみちを無数の人影がうようよしている。田圃の中には燈火あかり万燈まんどうのように明るくともっている。
鼠色の白楊はこやなぎよ、罪ありさうにふるへてゐる、全體ぜんたいどんな打明話うちあけばなしが、その蒼白あをじろい葉の上に書いてあつたのだらう、どういふ思出を恐れてゐるのだ、秋の小逕こみちに棄てられた熱に惱んだ少女子をとめごよ。
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
だいじゃう ヹローナ。カピューレットてい庭園ていゑん石垣いしがき沿へる小逕こみち
均平はラジオ体操で目がさめ、階下したへおりて指先の凍るような井戸の水で顔を洗い、上半身をもいてがけはずれのところに開けた畑の小逕こみちや建物のまわりを歩いていた。
縮図 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)