小笠おがさ)” の例文
百合、のび上って、晃がひもを押えくびに掛けたる小笠おがさを取り、瓢を引く。晃はなすを、受け取ってかまちにおく。すぐに、鎌を取ろうとする。
夜叉ヶ池 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
それを惜しいと思って小言こごとをいったところが、その人はかえって地蔵のたたりを受けたということです。(横須賀郷里雑記。静岡県小笠おがさ郡中浜村国安)
日本の伝説 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
いずれも手描きで、凧の好きな人はきっと見逃さないでありましょう。同じ小笠おがさ郡の平田村で作り出す麦藁細工むぎわらざいくの玩具に、昔から伝わる面白いものがあります。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
「もしもし、大高うじ暫時しばらく、大高氏。」と大風おおふうに声を掛けて呼んだのは、小笠おがさ目深まぶかに、墨の法衣ころも
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
藻抜もぬけのように立っていた、わしたましいは身に戻った、そなたを拝むとひとしく、つえをかい込み、小笠おがさを傾け、くびすを返すとあわただしく一散にけ下りたが、里に着いた時分に山は驟雨ゆうだち
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
与十よじゅう、竹の小笠おがさ仰向あおむけに、こいを一尾、嬉しそうな顔して見て、ニヤニヤと笑って出づ。
夜叉ヶ池 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
折から白髪天窓しらがあたますげ小笠おがさ、腰の曲ったのが、蚊細かぼそい渋茶けた足に草鞋わらじ穿き、豊島茣蓙としまござをくるくると巻いてななめ背負しょい、竹の杖を両手に二本突いて、おとがいを突出して気ばかりさきへ立つ
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)