小湊こみなと)” の例文
しかし、小湊こみなとの浜へ立って見ると、はじめて水が生きている、生きて七情をほしいままに動かしているということを、確実に感受せずにはおられません。
大菩薩峠:23 他生の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
房州ぼうしゅう小湊こみなとに近い村に住む農家の若い主人が、このわたしを誕生寺たんじょうじのほうへ案内しようと言ってくれました。
力餅 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
浅虫というところまで村々みな磯辺いそべにて、松風まつかぜの音、岸波のひびきのみなり。海の中に「ついたて」めきたるいわおあり、その外しるすべきことなし。小湊こみなとにてやどりぬ。
突貫紀行 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
近年中道等なかみちひとし君の発見した『津軽の奥』という一巻には、野辺地の馬門から関所を越えて、狩場沢かりばさわ小湊こみなとと海沿いの往還を、久しぶりに通ったという紀行の次に
雪国の春 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
「だれが聞いたところでも、それが、ひどい佐賀なまりだったというんです。……ねえ、旦那、お祖師さまのご生国しょうこく安房あわ小湊こみなと、佐賀なまりのお祖師さまなんざ、ちと、おかしいでしょう」
我々はこの調子でとうとう銚子ちょうしまで行ったのですが、道中たった一つの例外があったのを今に忘れる事ができないのです。まだ房州を離れない前、二人は小湊こみなとという所で、たいうらを見物しました。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
小湊こみなとの浜で、梵音ぼんおん海潮音かいちょうおんを聞かせられたことはあるけれども、彼にはその感激はあるけれども、体得はない。
大菩薩峠:38 農奴の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
鹿野山かのうざんという山一つ越せば、日蓮にちれん誕生寺たんじょうじで知られた小湊こみなとへ出られることをも知りました。
力餅 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
小湊こみなと片海かたうみあたりのように、あらゆる水の跳躍を見るというわけでもなし、お仙ころがしや、竜燈の松があるというわけでもなし——至極平凡を極めたものですね
大菩薩峠:28 Oceanの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「あなたはいつぞや、小湊こみなとの浜辺に遊んで、海の水の変化と、感情と、生命とを、私に教えましたが、あなたたちの見る変化と、われわれの見る変化とは違います」
大菩薩峠:25 みちりやの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
私は、小湊こみなと荒海あらみ天津あまつたえうらあたりの浜辺に遊んでいる真黒なはなたらしの漁師の子供を見るたびに、聖日蓮ここにありと、いくたび感激の涙をこぼしたか知れません。
大菩薩峠:23 他生の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
駒井は大六の持船天神丸に同乗して、小湊こみなとからこちらへ送り届けられたことがあります。
大菩薩峠:21 無明の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
その日蓮上人は小湊こみなとの浜辺に生れて、十二歳の時に、同じ国、同じ郡の清澄きよすみの山に登らせられてそこで出家を遂げました。それは昔のことで、この時分は例の尊王攘夷そんのうじょういの時であります。
大菩薩峠:18 安房の国の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「房州の小湊こみなとへ行く道にお仙転せんころがしというのがあるが、ここには座頭転がしというのがある、座頭転がしとはなにか由緒ゆいしょがありそうな名じゃ、どういうわけで、そんな名前がついたのだ」
日蓮上人は、安房あわの国、小湊こみなとの浜でお生れになりました。
大菩薩峠:23 他生の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)