封緘ふうかん)” の例文
僕はよく見なかったが、司法主任の横からチョット覗いてみると普通の封緘ふうかんハガキに下手な金釘かなくぎ流でバラリバラリと書いたものじゃったよ。
二重心臓 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
かれも少しさけの気をさまして、いそがわしくふうを切った。またその下にも封緘ふうかんがしてある。よほど大事なことだなと思った。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その筒のうえに、厳重に封をしてあったのに、その封緘ふうかんが二つにひきさかれ、そして筒には開いたあとがついている。
人造人間の秘密 (新字新仮名) / 海野十三(著)
ある日朝早く書斎に入ってみるとつくえの上に函書てがみがのっかっていて、固く封緘ふうかんをしてあった。そして函書には「仲氏啓おとうとひらく」としてあった。よく見るとそれは兄の筆迹であった。
成仙 (新字新仮名) / 蒲 松齢(著)
給仕に手伝はせて発信文書に封緘ふうかんをしてゆくイリリヤ嬢の、おとがひの汗、手の甲の汗。……それが週に一度のメール・デーになると、文字どほりの火事場さわぎが現出するのであつた。
灰色の眼の女 (新字旧仮名) / 神西清(著)
丁寧にたたんで使いのこりの封緘ふうかんの間にはさまれているその電報を見たとき、ひろ子は、それを監獄で読んだときの重吉の思いを、そのまま、わが胸に感じた。網走へ。宮城へ。この電報はうたれた。
風知草 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
〔評〕南洲守庭吏しゆていりと爲る。島津齊彬なりあきら公其の眼光がんくわう烱々けい/\として人をるを見てぼん人に非ずと以爲おもひ、拔擢ばつてきして之を用ふ。公かつて書をつくり、南洲に命じて之を水戸みとれつ公に致さしめ、初めより封緘ふうかんを加へず。
浄書、封緘ふうかんは記録所で扱わせます。
書信 封緘ふうかん葉書二枚。
独房 (新字新仮名) / 小林多喜二(著)
と、頼み事を口授こうじゅして、一通をしたためさせた。終ると、自身署名して封緘ふうかんをし、べつな家従の者に持たせて、すぐ本家祝朝奉しゅくちょうほうの居館へと、いそがせてやった。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
中身を小さいさじの上にすくいとってみたり、天秤てんびんの上に白紙を置いてその上に壜の内容全部をとりだしてはかったり、また封の切ってないものは封緘ふうかんを綿密に検べたり
ゴールデン・バット事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
まして、ちゃんと一つの封緘ふうかんがひかえていて見れば。