富岳ふがく)” の例文
旧字:富嶽
山においては富岳ふがくの高きを見、水においては遠州洋えんしゅうなだの深きを見、人においては佐久間を見る。その始めや漢蘭学芸の事を問い、遂に天下の勢に及ぶ。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
人穴ひとあな残党ざんとうを一きょ蹴散けちらして、主将呂宋兵衛るそんべえを生けどり、多宝塔たほうとうの三じゅうふうじこめた伊那丸いなまる軍兵ぐんぴょうが、あかつきの陣ぞろいに富岳ふがく紅雲こううんをのぞんで
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
東海より朝日差すところ朝雲高くそびゆる富岳ふがくをもって象徴せられた日本は滅亡した。大和民族は最低の奈落に突き落とされた。私たちは生きて恥をかくばかりである。
長崎の鐘 (新字新仮名) / 永井隆(著)
芙蓉ふようはな清々すがすがしくもいろめて、西にしそらわたった富岳ふがくゆきえていた。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
「ざんねんながら、富岳ふがくの一天に凶兆きょうちょうれきれき、もはや、死か離散かの、二よりないようにぞんぜられまする」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
富岳ふがく崩るといえども、刀水るといえども、誓ってこの言にそむかざるなり。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
才蔵は新参者しんざんものの身にすぎた光栄と、いさんでその夜、こっそりと鳥刺とりさ稼業かぎょうの男に変装へんそうした。そしてもち竿ざお一本肩にかけ安土あづちの城をあかつきに抜けて、富岳ふがくの国へ道をいそぐ——
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)