容貌かほ)” の例文
樽野は今更のやうに大ちやんの容貌かほが祖父似であることを知つた。そして大ちやんも年をとつたな——などと思つた。
鶴がゐた家 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
をとこをんな法師はふしわらは容貌かほよきがきぞとは色好いろごのみのことなりけん杉原すぎはららうばるゝひとおもざしきよらかに擧止優雅けにくからずたがても美男びなんぞとゆればこそは
五月雨 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
容貌かほに自信のない三十女が、どんなに結構な諜者スパイの役目をするかは、平次もよく心得てをります。
今、われ汝の人とりをみるに、身体むくろ長大たかく容貌かほ端正きらきらし、力能くかなへぐ、猛きこと雷電いかづちの如く、向ふ所かたきなく、攻むる所必ず勝つ。即ち知る、形は則ち我が子にて、実は即ち神人かみなり。
二千六百年史抄 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
夫人はその方へ行つて、一寸自分の容貌かほを映して見て、復たお鶴の方へ来た。
灯火 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
芸よりは容貌かほで売れ容貌よりは男たらしの上手にていつも見番に千寿の花の咲かせしものなりしに、年頃物堅かりし金三の、四十二の厄年に祟られてや、七八年前よりはからずお艶に迷ひ出し
野路の菊 (新字旧仮名) / 清水紫琴(著)