家鶏にわとり)” の例文
半ば眠れる馬のたてがみよりは雨滴しずく重くしたたり、その背よりは湯気ゆげ立ちのぼり、家鶏にわとりは荷車の陰に隠れて羽翼はね振るうさまの鬱陶うっとうしげなる
わかれ (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
家鶏にわとりなどが飼ってあり、壁にはみの、笠、合羽、草鞋わらじ、そんなものが掛けてあり、隅には鋤だの鍬だのの、道具が寄せて立てかけてあった。
血煙天明陣 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
昼は邸の裏の池に鉄網かなあみを張って飼ってある家鴨あひる家鶏にわとりいじったり、貸し本を読んだりして、ごろごろしていたが、それにもんで来ると、お庄をいびったり、揶揄からかったりした。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
水車場とこの屋との間を家鶏にわとりの一群れゆききし、もし五月雨さみだれ降りつづくころなど、荷物ける駄馬だば、水車場の軒先に立てば黒き水はひづめのわきを白きわら浮かべて流れ
わかれ (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
この林から一里ほど離れた地点ところに、だだっ広い前庭を持った一構えの農家が立ってい、家鶏にわとりひなが十羽ばかり、親鶏の足の周囲を、欝金色うこんいろの綿の珠が転がるかのように
血曼陀羅紙帳武士 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
桑園くわばたけの方から家鶏にわとりが六、七羽、一羽の雄に導かれてのそのそと門の方へやって来るところであった。
河霧 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
何んとなく殺気立った気勢けはいに驚き、啼き立つ家鶏にわとりの籠脇に立ち、冬次郎は烈しい叱咤の声で
血煙天明陣 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
林のかなたでは高く羽ばたきをして雄鶏おんどりが時をつくる、それが米倉の壁や杉の森や林や藪にこもって、ほがらかに聞こえる。堤の上にも家鶏にわとりの群が幾組となく桜の陰などに遊んでいる。
武蔵野 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
と、ツカツカと貝十郎は、家鶏にわとりの籠へ近寄ったが、ポーンと籠を足で蹴った。
血煙天明陣 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
附近ちかくの農家で飼っていると見え、家鶏にわとりの啼き声が聞こえて来た。
血曼陀羅紙帳武士 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「ニ、家鶏にわとり! ニ、家鶏!」
奥さんの家出 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)