宵々よいよい)” の例文
さすがに、あきになると、宵々よいよいに、荒海あらうみせるなみおとが、いくつかの村々むらむらぎ、えて、とおくまできこえてくるのであります。
二番めの娘 (新字新仮名) / 小川未明(著)
彼の頭にはおそらくこの「夕飯ゆうめしのかますご」が膠着こうちゃくしていてそれから六句目の自分の当番になって「宵々よいよい」の「あつ風呂ぶろ」が出現した感がある。
連句雑俎 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
八月ももう末の夜で、宵々よいよいごとに薄れてゆくあまの河の影が高く空にあわく流れていた。すすり泣きをするような溝川の音にまじって、かわずは寂しく鳴きつづけていた。
鳥辺山心中 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
むろん旧暦ですから今の九月ですが、宵々よいよいごとにそろそろと虫が鳴きだして、一年十二カ月を通じ、この月ぐらい人の世が心細く、天地蕭条しょうじょうとして死にたくなる月というものはない。
宵々よいよいに見る星の光が夜ごとに深くなって来た。梧桐あおぎりの葉の朝夕風に揺ぐのが、肌にこたえるように眼をひやひやと揺振ゆすぶった。自分は秋に入ると生れ変ったように愉快な気分を時々感じ得た。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
古い家の沈静ななかで過ごす宵々よいよいの楽しさ。
そうして、毎年正月十五日から五日のあいだは、明州府の城内に元宵げんしょうの燈籠をかけつらねて、諸人に見物を許すことにしていたので、その宵々よいよいの賑わいはひと通りでありませんでした。