あか)” の例文
ひとつ田に、兵と百姓とはすねうずめてなえを植えた。働く蜀兵の背中に負われているあかン坊を見ると、それは魏の百姓の子であった。
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いうや否、今までここの内儀とあかン坊の添寝していた夜具の中へもぐりこんだ。夜具の中には、母子おやこぬくみがまだあった。武蔵の体はしかしそれよりも熱かった。
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「上へあがって、お茶でも入れておいでなさい。十九にもなって、三年も人中で奉公もして来ながら、どうしてこのはこういつまで、あかンぼみたいなんだろう」
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
律義者りちぎものの子だくさん、ということわざのように、この国の特徴は、どこの軒からもあかぼうの声がよくすることである。その頃、浜松、岡崎を通る旅人がきっということは
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
旅帰りだから仕方がないが、この夫婦は、やがて家の中に坐ると、そのあかン坊と、べつな話で持ち切って、共に着いて今夜の一泊をたのんだ武蔵などは眼中にない。
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「まだ、まだ、お前さん達は、わたしの眼から見ても、あかン坊だもの。典馬には、辻風黄平こうへいという弟があって、この黄平がひとり来れば、お前さん達は、たばになってもかなわない」
宮本武蔵:02 地の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ずいぶんわけのわからない人だなあ、お通さんはもっと賢い人かと思ったら、まるであかンぼみたいなところもあるぜ。最初から、嘘だかほんとだか、あてにはならないことだったんだろ。
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
錦小路がわの一部隊は、すぐ附近の貧民窟ひんみんくつの民家をぶちこわしにかかっていた。つぶされた家の下からあかぼうを抱いた女や老人や子どもらが、貝殻の中から逃げるやどかりみたいに逃げ散った。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その代りに、りん弥はもう、紹由しょうゆうにいいつけられて、吉野太夫を連れてくる使いをわすれていた。足がよごれたので、下部しもべの女にかかえられて、あかぼうみたいに、どこかへ持って行かれてしまった。
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
生れたてのあかぼうのように、彼のひとみは驚嘆きょうたんして、この世の美に打たれている。知らず識らずまなじりから涙がながれて止まらない。涙は耳の穴をもこそぐった。この知覚ちかくさえ生きている証拠しょうこではないか。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「露が寒い、歩こうぜ。オヤ、あかは、寝ちまったのか」
野槌の百 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あれなら、よく見かけるが、まるであかぼうじゃないか。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
やって、すぐあかン坊の顔を
日本名婦伝:谷干城夫人 (新字新仮名) / 吉川英治(著)