はした)” の例文
ようこそと玄關に高きはした女が聲を、耳とく聞きて、膝にねふれる小猫をおろし、よみさしの繪入新聞そこの茶だんすの上にのせて、お珍らしや何風に吹かれ給ひてぞ
花ごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
はしたのかねと共に酒席の後片付けをしてから、酔い覚めの水を持って小房が寝所へ入って行くと、暗くしてある有明行灯ありあけあんどんの光の下で、辰之助がふっと夜具の中から笑顔を見せた。
(新字新仮名) / 山本周五郎(著)
しゅうおもいのおはしたはお稲荷様いなりさまへお百度を踏みにと飛出して、裏町へ回り焼芋を二銭買い、たもとれて御堂みどうに赴き、お百度をいいまえに歩行あるきながらそれをむしゃむしゃ、またと得難き忠臣なり。
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
せんかみさんの義理の弟——先代のめかけともはしたとも知れないような或女に出来た子供——のいる四谷の方へもお島は顔出しをしなければならないように言われていたが、それはもう商売上の用事で
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
わがはしたなにおもふらむ廚辺くりやべ桜花はなのもとにあちらむきてり
(新字旧仮名) / 岡本かの子(著)