娼家しょうか)” の例文
パン屋のかまどの跡や、粉をこねたうすのようなものもころがっていた。娼家しょうかの入り口の軒には大きな石の penis が壁から突き出ていた。
旅日記から (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
そして近くの娼家しょうかへ引っ張って来ると、他の女たちも出て、足を洗ってくれるやら、濡れた着物を脱がすやら下へもかない。
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
芝浦しばうらの月見も高輪たかなわ二十六夜待にじゅうろくやまちも既になき世の語草かたりぐさである。南品なんぴんの風流を伝えた楼台ろうだいも今はただ不潔なる娼家しょうかに過ぎぬ。
「仲居というのは娼家しょうか下婢かひにあたるものですかな」「まだよく研究はして見ませんが仲居は茶屋の下女で、遣手というのが女部屋おんなべや助役じょやく見たようなものだろうと思います」
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
娼家しょうからしい家が並んで、中庭のある奥の方から、閑雅な音楽の音がきこえて来た。
猫町:散文詩風な小説 (新字新仮名) / 萩原朔太郎(著)
または、変に気をひく微笑を浮かべてる古い家族の肖像、あるいは、高潔でかつみだらな勇武を示してる帝国式の版画、娼家しょうかにおけるアルキビアデスとソクラテス、アンチオキュスとストラトニス
何処どこ其処そこの長が家といえば、娼家しょうかというほどの意味にさえなった位であるが、初めは然程さほどに堕落したものでは無かったから、長の家の女の腹に生れて立派な者になった人々も歴史に数々見えている。
連環記 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
宮殿内の血痕けっこん洞窟どうくつ墨痕ぼくこん娼家しょうかろうの一滴、与えられた苦難、喜んで迎えられた誘惑、吐き出された遊楽、りっぱな人々が身をかがめつつ作ったひだ、下等な性質のために起こる心のうちの汚涜おどくの跡
七切通ななきりどおしの安手な娼家しょうかから一流どこの茶屋、白拍子の家までが、夜ごと、やけくそな武人の遊興に紅燈こうとうをただらしていた。
私本太平記:06 八荒帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
文明のどん底、東ロンドンの娼家しょうかの戸口から、意気でデスペラドのマッキー・メッサーが出てくる。
映画雑感(Ⅰ) (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
翌朝麻布の娼家しょうかを立出で、渋谷村しぶやむら羽根沢はねざわ在所ざいしょに、以前愚僧が乳母うばにて有之候おつたと申す老婆ろうば
榎物語 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
もちろん、ここは娼家しょうか、女達も皆、そういう小次郎に加勢して、又八の着物など返してくれるはずもない。
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いわれて見ると、なるほど、この神社の界隈には、娼家しょうからしい構えが幾軒も見える。
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)