天窓てんまど)” の例文
俊助は高い天窓てんまどの光のもとに、これらの狂人の一団を見渡した時、またさっきの不快な感じが、力強く蘇生よみがえって来るのを意識した。
路上 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
「あ、見給え。チャンウーの店には天窓てんまどがあるよ。あそこからのぞけば、店の様子がよく見えるにちがいないよ」
少年探偵長 (新字新仮名) / 海野十三(著)
学校の子供が、雨天体操場で遊んでいる時のようだ。そのうちの一つが彼のあしの間へ飛び込む。ちょいと気味がわるい。もう一つが、天窓てんまどあかりの中を躍り上がった。仔羊こひつじだ。
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
此處こゝです。』と一言いちごんのこして、鐵門てつもんくゞつた、わたくしもつゞいてそのなかると、たちまる、此處こゝは、四方しほう數百すうひやくけん大洞窟おほほらあなで、前後左右ぜんごさゆうけづつたやう巖石がんぜきかこまれ、上部じやうぶには天窓てんまどのやうな
「錢形か、——こいつばかりは兄哥でもわかるめえよ。何處からどうして入つたか、まるつ切り見當も付かないんだ。戸締りに變りは無いし、縁の下にも天窓てんまどにも人間のもぐり込んだ跡は無いんだぜ」
何、わたしの逃げみちですか? そんな事は心配に及びません。この高い天窓てんまどからでも、あの大きい暖炉だんろからでも、自由自在に出て行かれます。
報恩記 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
春木少年は爆音のちかづく空のかなたと、万国堂のくらい天窓てんまどとを、手に汗にぎって見くらべていたが、ちょうどそのとき、警部の一行が到着したらしい。
少年探偵長 (新字新仮名) / 海野十三(著)
うまや天窓てんまどから、お屋敷の下男が頭を出し、歯をいている——
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
と思っているうちに、その天窓てんまどが急にくらくなったかと思うと、大きな黒い材木のような怪物が落ちてきた。そして、一郎の足許で猛烈にあばれだしたから、さあ、たいへんであった。
未来の地下戦車長 (新字新仮名) / 海野十三(著)
僕はまだ小学時代からかう云ふ商人の売つてゐるものを一度も買つた覚えはない。が、天窓てんまど越しに彼の姿を見おろし、ふと僕の小学時代に伯母をばと一しよに川蒸汽へ乗つた時のことを思ひ出した。
本所両国 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)