大輪おおりん)” の例文
谿間たにまの百合の大輪おおりんがほのめくを、心は残るが見棄てる気構え。くびすを廻らし、猛然と飛入るがごとく、むぐらの中に躍込んだ。ざ、ざ、ざらざらと雲が乱れる。
星女郎 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
帆の中より、水際立って、美しく水浅葱みずあさぎに朝露置いた大輪おおりんの花一輪、白砂の清き浜に、うてなや開くと、もすそさばいてと下り立った、洋装したる一人の婦人。
悪獣篇 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
黒き人影あとさきに、駕籠ゆらゆらと釣持ちたる、可惜あたらその露をこぼさずや、大輪おおりんの菊の雪なすに、月の光照り添いて、山路に白くちらちらと、見る目はるかに下りきぬ。
清心庵 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
肩を斜めに前へ落すと、そでの上へ、かいなすべつた、……月が投げたるダリヤの大輪おおりん白々しろじろと、揺れながらたわむれかゝる、羽交はがいの下を、軽く手に受け、すずしい目を、じっと合はせて
印度更紗 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
あたかもその大輪おおりんかついだよう、うすものくれない襦袢じゅばんすかして、濃いお納戸地に銀泥をもって水に撫子なでしこを描いた繻珍しゅちんの帯を、せなに高々と、紫菱田鹿の子の帯上を派手に結んだ、高島田で品の
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
浅黄の天鵝絨びろうどに似た西洋花の大輪おおりんがあったが、それではなしに——筋一ツ、元来の薬ぎらいが、快いにつけて飲忘れた、一度ぶり残った呑かけの——水薬すいやくの瓶に、ばさばさと当るのを、じっみつめて立つと
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
師走の山路に、嫁菜が盛りで、しかも大輪おおりんが咲いていた。
歌行灯 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
……大輪おおりんなのも面影に見えるようです。
神鷺之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)