大怪我おおけが)” の例文
何しろ、竹棒のてっぺんからぞうの足下までは七メートルもあるのですから、たとえ死なないまでも、大怪我おおけがをするにきまっています。
曲馬団の「トッテンカン」 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
彼は咄嗟とっさの場合ハッと片傍かたわきへ飛びのいたからよかったものの、しそうでなかったら、その物体に打たれて大怪我おおけがをしている所でした。
屋根裏の散歩者 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
職人の方は、大怪我おおけがをしたようです。それでも、近所の評判は、その丁稚でっちの方がいと云うのだから、不思議でしょう。
或日の大石内蔵助 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
夜なかに、こっそり起きて分析試験をしていた黒江氏が、誤って吸管すいかんの炎を咽喉のどに吸いこんで大怪我おおけがをしてしまった。
キャラコさん:04 女の手 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
松ヶ谷団長がいてくれれば、ここは、うまくとりつくろうことができたのであるが、団長は大怪我おおけがをしたと聞いた後に、どうなったかよく知らない。
爆薬の花籠 (新字新仮名) / 海野十三(著)
半沢良平は大怪我おおけがをしましたが、幸い生命には別条なく「不慮の災難」で公向きは済みましたが、昔気質むかしかたぎの小田切三也の気持はうも其儘そのままでは済みません。
百唇の譜 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
無用の大怪我おおけがばかりして、またこの道にも特別の興ありと見えて、やめられず椴子どんすのまわしなどして時々ゆるんでまわしがずり落ちてもにこりとも笑わず
新釈諸国噺 (新字新仮名) / 太宰治(著)
斯様こんな時によく子供の大怪我おおけががある。家の内は麦ののげだらけ、墓地は草だらけで、お寺や教会では坊さん教師が大欠伸おおあくびして居る。後生なんか願うて居る暇が無いのだ。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
今小屋にかかっている嵐粂吉あらしくめきち一座の者や、八王子の宿場問屋を出て来た者が大勢一緒だったから、何の事もなかったそうだが、でも、途中で大怪我おおけがをしている侍があって
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
戦争の要領を覚えたツモリでも、新手を打つのを天才といって、生兵法なまびょうほう大怪我おおけがの元という通りだ。習い覚えた要領も、次の戦争のドサクサには役に立ちそうもないらしいや。
武者ぶるい論 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
「おマン、広島のおさんが、大怪我おおけがをしたちゅうで」
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
あの恋文の宛名は誰だかわかりませんが、幽里子がこれ程の大怪我おおけがをして生死の境をさ迷っているのに、一度も見舞に来てくれないとは何んとしたことでしょう。
「た、大変です。一郎さんは大怪我おおけがをして倒れていらっしゃいます。早く、早くきてください」
暗黒星 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
前に馴染なじみだった鳥屋の女中に、男か何か出来た時には、その女中と立ち廻りの喧嘩をした上、大怪我おおけがをさせたというじゃありませんか? このほかにもまだあの男には、無理心中むりしんじゅうをしかけた事だの
一夕話 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
半面の大怪我おおけがで世の女の望みを諦めて居たお通が、騙されて夫婦約束をしたのも、飛行具の秘密を易々盗まれたのも無理のないことですが、鶴次郎は、それを土産みやげに金沢に帰り
天保の飛行術 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
その男——蛭田嶺蔵ひるたれいぞうという名前だ——が、問わず語りに話した所によると、先年の大震火災の時、手足を失い、顔中やけどをしたので、この大怪我おおけがに命をとりとめたのは奇蹟だと
吸血鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)