夥伴なかま)” の例文
警吏は直ちに來りて、そが夥伴なかまなる三人を捕へき。われはその車上に縛せられてまちに入るを見たり。市の門にはフルヰアの老女おうな立ち居たり。
しかし近頃それがしの宮殿下が我々の夥伴なかまを召されて浅からぬ御寵愛を忝ふするは我々の世の中に出る機運が熟したんだね。
犬物語 (新字旧仮名) / 内田魯庵(著)
一時村の遊び夥伴なかまの中に、重右衛門と名を呼ぶ者はなく、孫や、孫やで通つたなども、かれの悲劇を思ふ人の有力なる材料になるに相違ない。
重右衛門の最後 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
抽斎が岡西氏とくうませた三人の子のうち、ただ一人ひとり生き残った次男優善は、少時しょうじ放恣ほうし佚楽いつらくのために、すこぶる渋江一家いっかくるしめたものである。優善には塩田良三しおだりょうさんという遊蕩ゆうとう夥伴なかまがあった。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
今の下士は夥伴なかまの兵士と砲声を耳にしつつしきりに語り合っている。糧餉を満載した車五輛、支那苦力の爺連おやじれんをなして何ごとをかしゃべり立てている。
一兵卒 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
前者は伊太利大盜の名にして、同胞魔君の義なり。實の氏名をミケレ・ペツツアといふ。千七百九十九年夥伴なかまひきゐて拿破里王に屬し、佛兵と戰ひて功あり。官職を授けらる。
優善の夥伴なかまになっていた塩田良三りょうさんは、父の勘当をこうむって、抽斎の家の食客しょっかくとなった。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
俺が朋輩の家禽にはとり牛馬うしうま夥伴なかまでは、日本産でも純粋種は大切だいじにして雑種はいやしんでおるさうだ。それ当然あたりまへの筈だのに、犬だけは雑種までが毛唐臭い顔付をしてけつかるは怪しからん咄だ。
犬物語 (新字旧仮名) / 内田魯庵(著)
デ・チエザアリが夥伴なかまは遠き處まで根を張れば、法皇はいかにすきり給ふとも、御腕の痛むのみなり。甲。客人はなどて何の器械えものをも持ち給はぬ。見られよ、この銃は三連發なり。
山県の総領の兄などはその幼い頃の遊び夥伴なかまで、よく一所に蜻蛉とんぼつるませに行つたり、草を摘みに行つたり、山葡萄やまぶだうりに行つたり為た事があるといふが、今で、一番記憶に残つて居るのは
重右衛門の最後 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)