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夏帽子
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なつばうし
何うした
事か、
今年は
夏帽子が
格安だつたから、
麥稈だけは
新しいのをとゝのへたが、さつと
降つたら、さそくにふところへねぢ
込まうし、
風に
取られては
事だと……ちよつと
意氣にはかぶれない。
影法師も
露に
濡れて——
此の
時は
夏帽子も
單衣の
袖も、うつとりとした
姿で、
俯向いて、
土手の
草のすら/\と、
瀬の
音に
搖れるやうな
風情を
視めながら、
片側、
山に
沿ふ
空屋の
前を
寂しく
歩行いた。