壮佼わかいしゅ)” の例文
旧字:壯佼
カフェーで私にこの話をしたのは、やっぱり車屋の壮佼わかいしゅであった。彼の見た怪しい老婆と云うのは何人だれも見ていないとのことであった。
雪の夜の怪 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
金太きんたと云う釣好つりずき壮佼わかいしゅがあった。金太はおいてけ堀に鮒が多いと聞いたので釣りにった。両国橋りょうごくばしを渡ったところで、知りあいの老人にった。
おいてけ堀 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
「旦那がせんだっても、そう仰しゃるものですから、それとなしに壮佼わかいしゅに聞かしたのですが、何人だれも知らないのですよ」
春心 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
一人は素肌に双子ふたごあわせを着て一方の肩にしぼり手拭てぬぐいをかけた浪爺風あそびにんふうで、一人は紺の腹掛はらがけ半纏はんてんを着て突っかけ草履ぞうりの大工とでも云うような壮佼わかいしゅであった。
春心 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
蔦芳の見た幽霊は、蔦芳が後で調べてみると、其処の女郎屋の壮佼わかいしゅであった。其の壮佼の徳蔵とくぞうと云うのは、病気の親に送る金に困って客の金を一盗んだ。
幽霊の衣裳 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
おかの方から堰堤の上をどんどん駆けて来た者があった。普請役場の小厮こものに使っている武次たけじと云う壮佼わかいしゅであった。
海神に祈る (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
間もなく由平の前に三人の人影が現われた。それは宇津江うづえ帰りらしい村の壮佼わかいしゅであった。壮佼たちは何か面白そうに話しながら通りすぎた。由平はほっとした。
阿芳の怨霊 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
それはあおい顔をしたひたいのせまった男で、車屋の壮佼わかいしゅとでも云えそうなふうつきであった。私は額のせまった、酒でわからなくなりそうなその男の顔を見ていた。
雪の夜の怪 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
伝蔵は角力が上手で二見潟と云う名乗を持っていたが、体に似合わないおとなしい壮佼わかいしゅであった。
蟹の怪 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
隣村の伊太郎と云う血気ざかり壮佼わかいしゅが、某夜あるよ酒をひっかけて怪物の探検に来たが、その途中どこからともなくこいしが飛んで来て、眉間に当って負傷したので蒼くなって逃げ帰った。
唖の妖女 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
(おいらは親方の用事で来てるのだよ、きちょうめんな壮佼わかいしゅだ、ふざけたことを云うない)
雪の夜の怪 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
ちびりと飲んだあげく、もう鴇母やりて壮佼わかいしゅも座敷のしまつをせずに、そのまま打っちゃらかしておいてさっさと引きさがって往くのを見すますと、しめたと床へ入り、直ぐ寝たふりをして見せると
幽霊の自筆 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
壮佼わかいしゅ、気をつけろ、わしがぼけてる、眼は秋毫しゅうごうさきもはっきり見える、耳は千里のそとを聞くことができるのだ、おまえなんざ無学だから、こんなことを云っても判らないだろうが、私はこう見えても
春心 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
やはりわらのうえからもらわれて、ここの家で育っていた壮佼わかいしゅとできあって、二人で他愛もなくやっているうちに、養女に他から養子をもらうことになりますと、どうも二人で情死しんじゅうをしたらしいですよ
鼓の音 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
「車屋の壮佼わかいしゅに、荷車の壮佼を知った者があってね」
藍瓶 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
背のずんぐりした角顔の壮佼わかいしゅの顔があった。
蟹の怪 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
「おい、おい、壮佼わかいしゅ、起きろ、起きろ」
牡蠣船 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)