塩町しおちょう)” の例文
これからお話をいたすのは、四谷塩町しおちょうの大津屋という絵馬屋の一件で、これも相当に古い店だということでした
半七捕物帳:50 正雪の絵馬 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
瑠璃子が赤阪ひとで先に降り、次に春代が四谷よつや左門町さもんちょうで降りると、運転手はあらかじめ行先を教えられているので、塩町しおちょうの電車通から曲って守阪かみざかを降りかけた。
つゆのあとさき (新字新仮名) / 永井荷風(著)
お岩はそこで喜兵衛に口を利いてもらって、四谷塩町しおちょう二丁目にいる紙売の又兵衛またべえと云うのを請人に頼んで、三番町さんばんちょうの小身な御家人ごけにんの家へ物縫い奉公に住み込んだ。
四谷怪談 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
「何分よろしく」と頼んで外へ出た。角へ来て、四谷から歩く積りで、わざと、塩町しおちょう行の電車に乗った。
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
わけても、新宿しんじゅく駅前から塩町しおちょう辺にかけての街上一帯は日に日にその雑踏が激しくなるばかりだ。
或る嬰児殺しの動機 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
塩町しおちょうから大伝馬町おおでんまちょうに出る。本町を横切って、石町河岸こくちょうがしから龍閑橋りゅうかんばし鎌倉河岸かまくらがしに掛る。次第に人通が薄らぐので、九郎右衛門は手拭を出して頬被ほおかぶりをして、わざとよろめきながら歩く。
護持院原の敵討 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
塩町しおちょうと云う処に、相模屋さがみやと云う料理茶屋が有ります。此家これ彼地あちらでは一等の家でございます。或日あるひのこと、桑原治平くわばらじへいと云う他所よそへ反物を卸す渋川しぶかわ商人あきんどと、茂之助は差向いで一猪口いッちょこりながら
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
金右衛門の一行四人は先ず四谷塩町しおちょうの親類をたずねて、ここで午飯ひるめしを馳走などになって、それから千駄ヶ谷谷町たにまちに住んでいる親類をたずねることになりました。
半七捕物帳:60 青山の仇討 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)